トランプの政策、ISISに「復活の好機」もたらす可能性
ニューズウィーク日本版 / 2017年2月14日 8時17分
米国への攻撃を画策か
こうした後退にもかかわらず、ISは激しい抵抗を続けており、米国をはじめとする西側同盟諸国にとって深刻な脅威であることに変わりはない。
ISはすでに、カリフ国家に代えて、シリアやイラクの村落地域における反乱、欧州におけるテロ攻撃の実施、中東からトルコ、エジプトに至る地域の西側の同盟国に対する攻撃など、きわめて危険な選択肢に取り組み始めている。
そして今や、イスラム主義に関する専門家のなかには、ISが米国における攻撃に向けた取り組みを強化しており、過去15カ月にパリ、ブリュッセル、ニース、ベルリン、イスタンブールで実行されたような攻撃を同国で再現しようとしているとの見方が浮上している。
かつての過激派組織アルカイダと同様、ISは以前より、西側諸国はムスリムに対する根深い敵意を持っていると主張。この10年間、こうした論法が1つの要因となって、中東などの地域において彼らの主張に耳を傾ける過激な聴衆が増えてきた。
トランプ大統領の政策によって、聖戦主義者たちは非常に動きやすくなるだろう、とジョージワシントン大学で過激主義研究プログラムの研究員を務めるモクタール・アワッド氏は予想する。
「彼らは単に(攻撃に向けた)戦略に『倍賭け』していき、彼らの戦場にすべてを投資する代わりに、さまざまな中東・西側諸国における下部組織を活性化させるよう、これまで以上に努力するだろう」と同氏は言う。
「米国での攻撃は、それが恐ろしいものであればあるほど、トランプ大統領の弱さを示すという点で完璧な方法となるし、米新政権の一部が持っているであろう、きわめて排外的な外国人嫌悪の姿勢を強めることになる」と語った。
コミュニティの不信感を煽る
ISの戦略の大きな狙いは、社会を分断し、ムスリム住民への不信感を引き起こすことだ。たとえ、ムスリムがISに参加しなくても、社会が分断されていれば、彼らが武装勢力に反対する傾向が弱まるとISは考えていると専門家は言う。
どうすれば現時点のIS支持者にとって、この組織を無意味な存在にしてしまえるのか──。こうした「政治的な闘い」が、IS打倒を目指す者にとって、最も緊急を要することだとアナリストは分析する。
先月20日に就任したトランプ大統領の下で、米国政府は「中東においてISと戦うパートナーを求めている」というシグナルを送っている。
イラクにおけるモスル攻略作戦の最前線では、米軍部隊とイランは、同盟とまでは言わないまでも、協調した作戦行動を取っている。米国への入国制限令が復活するようなことがあれば、シーア派優位のイラク政府に対するイランの影響力が増すだろう。
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