トランプのアメリカで反イスラム団体が急増
ニューズウィーク日本版 / 2017年2月17日 14時40分
<大統領選以降、トランプが反イスラムの姿勢を鮮明にするなかで、昨年アメリカの反イスラムのヘイトグループの数が3倍に増えた>
昨年のアメリカ大統領選でドナルド・トランプが当選したことで、アメリカ国内の過激な右派グループが「明らかに活発化」し、反イスラムグループの数が3倍に増加したことが、民間団体「南部貧困法律センター(SPLC)」の報告書で明らかになった。
全米のヘイトグループや過激主義を監視するSPLCの報告書によると、アメリカのヘイトグループや過激な右派グループの数は、2015年の890から16年の917へと増加した。
SPLCのマーク・ポトクは、増加数そのものは少ないが過去最多とだった2011年の1018に近い数字まで増えているという。
なかでも「激増」しているのが、「反イスラム」のヘイトグループだ。15年の34から16年には101に増えた。大統領選でトランプが支持を拡大したことが大きな要因になっていると、ポトクは言う。トランプは選挙中、イスラム系住民の登録制度やモスクの監視などを主張していた。
世界規模の難民危機や反イスラム・プロパガンダの増加、またフロリダ州オーランドやカリフォルニア州サンベルナルディーノでイスラム教徒のテロによって多数の犠牲者が出たことなども、反イスラム感情が増大する要因となった。
【参考記事】入国禁止令、トランプ「敗訴」でひとまず混乱収拾へ
トランプで沸き上がるヘイト
「トランプは、『アメリカ在住のイスラム系住民のうち25%が、アメリカ人への暴力はジハードの名の下に正当化されると信じている』というデマを広めた」と、ポトクは指摘する。過激な右派グループによる暴力も、イスラム過激派による暴力と同様に深刻だという。
「トランプ現象は右派のヘイト感情を解き放ってしまった。過去にこうした例は思い浮かばない」と、ポトクは言う。「現状は(ナチスドイツが誕生した)1930年代のドイツとは違うものの、いくつかの共通点が見られる」
トランプ支持の波に乗って、ここ数年で少なくとも4つのヘイトグループが生まれたり、拡大したりしている。そのうちの一つがネオナチ系サイト「デイリー・ストーマー」で、ネット上だけでなくオフラインでメンバーが活動するクラブも結成している。その他のグループは、主に大学のキャンパス内で活動する小規模なグループだ。
【参考記事】トランプとロシアの接近に危機感、西側同盟国がアメリカをスパイし始めた
多くの人々がネット上だけで右派ヘイトの活動に参加しているため、正確な人数を計測するのは難しい。15年にサウスカロライナ州チャールストンの教会で9人の黒人を射殺したディラン・ルーフのように、「通常はネット上だけで活動し、突然攻撃に出る」ケースもある。「ルーフのような人物が多くいると考えている」と、ポトクは言う。
今週、トランプ政権のマイケル・フリン大統領補佐官が辞任したが、ポトクは「これで政権から反イスラムの補佐官が一人減った」と見る。しかし政権中枢にはまだ反イスラム主義の信奉者が多く残っているという。「首席戦略官のスティーブン・バノン、大統領補佐官のスティーブン・ミラー、大統領顧問のケリーアン・コンウェイ、司法長官のジェフ・セッションズ――そしてもちろん、トランプ大統領自身だ」
ルーシー・ウェストコット
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