一般市民まで脅し合う、不信に満ちた中国の脅迫社会
ニューズウィーク日本版 / 2017年2月18日 10時15分
こうした考え方は新しいものではない。現代中国の男性にとって「家の外」でのセックスにおいて重要なのは常に「自制」ができるかどうかだ。男に愛人がいるのは普通で健全で、時にはほぼ義務に近い行動と見なされてきた。危険なのは、自分または相手の行動をコントロールできなくなることだ。
私の知人で国有企業の要職にあった人物も、それが失脚の原因になった。彼の妻がオフィスに乗り込み、夫の「愛人の淫乱女」がここで働いているのを知っていると2時間にわたって怒鳴り続けたのだ。問題は彼に愛人がいたことではなく、彼が状況をコントロールできないという事実だった。
もっとも、こうしたルールは私たちの暮らす世界にも適用できそうだ。
実在するとされるトランプの「放尿テープ」の中身が、単に彼がモスクワでブロンド美女たちと戯れている映像だけならば、それだけで彼を脅すのに十分な「弱み」になるとは思えない。むしろそのテープは、彼の支持者たちが「美徳」とみるトランプの「男らしさ」を裏付けるものになりかねない。
しかし「放尿」が含まれているとすれば、それが噂として流れるだけでも問題になる。それはトランプの倫理性ではなく、「男らしさ」そのものに疑問を投げ付けるからだ。そんな弱みなら、ロシア人ばかりか中国人でも握りたいと思うだろう。
From Foreign Policy Magazine
[2017.2.14号掲載]
ジェームズ・パーマー
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