児童相談所=悪なのか? 知られざる一時保護所の実態
ニューズウィーク日本版 / 2017年2月23日 11時35分
「私であっても、携帯電話を取り上げられて、閉じ込められた場所で生活していると、一週間で気が狂うと思う。しかも、こういうところに来る子どもは、そもそも様々な意味で『不健康』な子どもなのに。 いくら私たちが必死にやっても、子どもたちが『ここは牢屋だ』と思うのはどうしようもない。子どもたちはカゴの鳥のような心境だろう。先日も二カ月以上ここにいる女の子が、『私がここに"連れてこられてから"、もう二カ月になる』とこぼしていて、心が痛かった。一時保護期間は、短くあるべきだ」。(96ページより)
ところで一時保護された子どもたちは、その後どうなるのだろうか? 著者によれば、半分強は家庭に戻り、一部の子どもはそのまま病院に移ることも。そして残る約4割の子どもが社会的養護に入ることになるのだそうだ。
【参考記事】子どもへの愛情を口にしながら、わが子を殺す親たち
社会的養護とは、実家庭で育つことができない子どもたちに、社会が代替的に提供する養育環境のこと。施設養護と家庭養護があり、前者の代表が児童養護施設、後者は里親家庭というわけだ。
しかし、ここに至るまでにも、いくつもの障害が立ちはだかっていることは先にも触れたとおり(あるいはそれ以上)だ。児童相談所側は「子どもの安全を守るために一時保護は当然の措置」と考えるが、親は「児相に子どもを取り上げられた」と考えることが多いからである。
しかも我々のような一般人には断片的な情報しかもたらされないため、「児童相談所=悪」のような"無責任なイメージ"だけが肥大化していくことになるのだろう。
ただし、それは単なるイメージでしかなく、基本的には憎しみを持って子どもと向き合っている職員などいないと考えるべきではないだろうか。その証拠に本書においても、理想と現実の狭間で苦悩する現場の人々の言葉が紹介されている。
「うちのケースワーカー(注:児童福祉司のこと)たちはみな疲れています。午前八時半から働き始め、仕事をしている親に会おうとすると、仕事終わりが夜一〇時を過ぎることも多いです。この児童相談所だけの話ではありません。二カ月に一度県内の児童福祉司会議がありますが、県内のすべての児童福祉司がみな同じ状態にあります。自分たちの仕事について時間をとって振り返る暇もなく、毎日ケースをおいかけています」。(179~180ページより)
「自分自身が子育て中であるにもかかわらず、自分の子どもに対してきちんとケアをしてあげられないのが辛い。たとえば、自分の子どもが明日受験なのに、虐待対応のために一緒にいてあげられないといったことがある。他人の子どものことをしながら、自分の子どもが後回しになっている現実に、日々葛藤が絶えません」。(182ページより)
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