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日本の地域再生を促すシビックプライドとは何か

ニューズウィーク日本版 / 2017年2月23日 14時10分

地元の美しが丘中学校でもシビックプライド・プロジェクトが展開されています。生徒が1年間リサーチやフィールドワークを行い、最後に自分たちで地域を豊かにするアイデアを提案するというもので、ここでも私は講評員を務めましたが、中学生の目線ではこんな風にまちが見えているんだ、と新鮮に感じます。

郊外型の住宅地は歴史的蓄積に乏しく、分かりやすい地域資源が見出しにくいことも多いのですが、こういうバラエティに富んだ案件を見ていると、人が資源であるということなんでしょう。

【参考記事】震災に強い町づくりは江戸の知恵に学べ



Photo: WORKSIGHT

地域の本質的な再生を促していくのは多面的なコミュニケーションポイント


住民創発プロジェクトの審査で重視したのは、やろうとしている活動が継続する何かを地域に残すものかということです。たとえば単発のイベントに見えても、それをきっかけに住民同士の継続的な交流や地域アイデンティティの認識を促すものであれば、シビックプライドはより育ちやすくなるからです。

シビックプライドは住民や地域団体が自ずと持つものなので、それ自体をデザインすることはできませんが、シビックプライドを盛り立てることにつながるまちと住民の接点、すなわちコミュニケーションポイントはデザイン可能です。

私が仲間と一緒に出版した著書では、主なコミュニケーションポイントを「広告、キャンペーン」「ウェブサイト、映像、印刷物」「ロゴ、ヴィジュアル・アイデンティティ」「ワークショップ」「都市情報センター」「フード、グッズ」「フェスティバル、イベント」「公共空間」「都市景観、建築」という9つに整理しましたが、短期間でプロモーション的に行うものと長期的にじっくり取り組むものとを関係づけていくことが重要です。

(『シビックプライド2【国内編】――都市と市民のかかわりをデザインする』p.7の図版を元に作成)

例えば、イベントは公共空間のあり方を変える力を持っています。その場が祝祭的な空間になって、見た人をインスパイアしたり公共空間の使われ方の幅を広げたりするもしれない。でも、イベントだけではシビックプライドは育っていきません。都市の景観や公共の空間・交通、ワークショップや教育など、より多彩なハード、ソフトが多面的に組み合わさることで、地域の本質的な再生が促されます。

ですから、シビックプライドの醸成は息の長い取り組みになります。シビックプライド醸成だけを目的とした期限付きの事業では、事業の終わりとともに立ち消えになってしまう懸念もあるので、福祉や教育など他分野の事業プロセスに入れ込んだり、まちの人々や風習、空間など、そこで続いていくものにうまく落とし込むのも有効でしょう。

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