7年目を迎えるシリア内戦:ますます混迷を深める諸外国の干渉
ニューズウィーク日本版 / 2017年3月15日 16時30分
トルコ軍の動きが封じられたことで増長したのはシリア政府だった。シリア軍はバーブ市南東部で支配地域を拡大し、アサド湖西岸に到達、ラッカ市に続く幹線道路に沿って進軍した。バッシャール・アサド大統領は3月11日、中国の民間衛星テレビ局「鳳凰衛視」(フェニックス・テレビ)のインタビューに応じ、そのなかで「ラッカ市は我々にとっての最優先事項だ」と明言し、シリア民主軍や米国が必要としている戦略的協力者としての存在を誇示した。
決定打を欠くロシア、米国、トルコ
しかし、ラッカ市解放作戦はどの紛争当事者によっても開始されていない。なぜなら、地上部隊を進駐させ、シリア内戦という泥沼に深入りしてしまったロシア、米国、そしてトルコの三カ国のいすれもが、ラッカ市攻略の主導権を握るための決定打を欠いており、そのことがシリア政府、ロジャヴァ、そして反体制派の「棲み分け」をめぐる三カ国の合意形成を遅らせているからだ。
ロシアは、シリア政府をイスラーム国に対する「テロとの戦い」の最終勝利者に位置づけようとしている。だが、疲弊した当のシリア政府は、米国の後援を受けるロジャヴァとの連携なくして、イスラーム国と対峙することも、シャーム解放委員会やシャーム自由人イスラーム運動と共闘を続ける反体制派との戦いを効果的に進めることもできない。
米国は、7年におよぶシリア内戦のなかでようやく獲得したロジャヴァという「橋頭堡」とNATO加盟国にして同盟国であるトルコとの衝突を回避することに腐心している。
トルコは、泡沫組織の寄り合い所帯であるハワール・キッリス作戦司令室の無力ゆえに、シリア国内での「テロとの戦い」に深入りし続けることで、レバノンの国土の半分に匹敵する広大な「安全地帯」(反体制派にとっての「解放区」)の維持という新たな負担を肩代わりさせられることに警戒している。
7年目を迎えたシリア内戦は、シリア政府、反体制派、ロジャヴァといったシリア国内の紛争当事者が衰弱し、自力で混乱を終息させる力を失っているだけでなく、それを操ろうとしてきた諸外国の政策も手詰まりを見せており、そのことがイスラーム国に延命の余地を与え続けている。
青山弘之(東京外国語大学教授)
この記事に関連するニュース
-
シリアで反政府勢力が第2の都市アレッポに侵入
日テレNEWS NNN / 2024年11月30日 12時19分
-
内戦シリアで反体制派が“北部最大都市”に到達 2016年以来
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年11月30日 9時32分
-
シリア反体制派、アレッポ州で政府軍に大規模攻撃
ロイター / 2024年11月28日 15時37分
-
クルド人の「迫害と弾圧」は今も続いているのか トルコ政府「問題は民族でなくテロ組織」 「移民」と日本人 クルド人が川口を目指す本当の理由④
産経ニュース / 2024年11月27日 11時30分
-
川口のクルド人、トルコの農閑期に難民申請、農繁期に帰国 血縁集団の絆で「移民の連鎖」 「移民」と日本人 クルド人が川口を目指す本当の理由③
産経ニュース / 2024年11月26日 11時30分
ランキング
-
1英下院「安楽死」法案可決 国民7割以上が支持
共同通信 / 2024年11月29日 23時47分
-
2ロシア軍の死者数、8万人を上回る 英BBCなど
日テレNEWS NNN / 2024年11月29日 21時18分
-
3焦点:戦闘員数千人失ったヒズボラ、立て直しには膨大な時間とコスト
ロイター / 2024年11月30日 7時52分
-
4低所得者向け賃貸住宅・駐車場にポルシェやBMW…韓国SNS炎上「富裕層が安い住宅、不公平」
KOREA WAVE / 2024年11月30日 7時0分
-
5スペインが「天災有給休暇」導入へ、200人超死亡の洪水受け 「危険な出勤しないで」
産経ニュース / 2024年11月30日 8時18分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください