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緊張が高まるトルコと西ヨーロッパ諸国

ニューズウィーク日本版 / 2017年3月16日 19時30分

表1:西ヨーロッパにおける2015年6月7日、11月1日総選挙の得票数と投票者数




公正発展党政権は、西ヨーロッパで賛成票をより多く集めるために、各国で集会を企画し、そこに閣僚を派遣する行動をとっている。しかし、この行動に対し、各国が懸念を示している。オーストリアではクリスティアン・ケルン首相がトルコの閣僚がEU域内での集会に出席すべきでないという立場を明確にしている。また、ドイツでもいくつかの州で集会が取りやめとなり、3月8日にドイツを訪問したメヴルット・チャヴシュオール外相がドイツの姿勢を批判した。

強硬な態度をとったのオランダの事情

そして、この政治集会に関して最もトルコに強硬な態度をとったのがオランダであった。まず、3月11日にオランダ政府は、集会に参加する予定であったチャヴシュオール外相のオランダへの入国を認めなかった。次いでファートマ・ベトゥル・サヤン・カヤ家族大臣のロッテルダムのトルコ領事館への入館を認めず、オランダ警察がカヤ大臣をドイツに送還した。トルコ政府はこの2人の閣僚へのオランダ政府の対応に激怒した。

エルドアン大統領やチャヴシュオール外相はナチズムという単語を使い、オランダの対応を非難した。最大野党の共和人民党のケマル・クルチダールオール党首も「オランダの非礼な対応は受け入れられない」として、この問題については政府を支持すると述べた。また、ロッテルダムのトルコ領事館前やイスタンブルのオランダ総領事館前では、オランダの対応を非難するトルコ人のデモが起こった。

なぜオランダ政府はこのような対応をとったのか。オランダは3月15日に総選挙を控えており、特に移民を標的とする極右政党の自由党が躍進するのではと予想されており、与党の自由民主党がトルコに対して弱腰の姿勢を見せることが選挙に不利になると判断した可能性がある。

マーク・ロッタ首相はトルコとの外交問題が穏便に解決することを望むと発言したが、トルコは3月13日にオランダに対して、2国間の全てのハイレベルな外交関係の停止と、大使を含む外交官のトルコへの飛行機の着陸の禁止という制裁を発表した。ニュマン・クルトゥルムシュ副首相は今後の展開次第では経済制裁を含むさらなる追加制裁もトルコが取り得ることを示唆した。

トルコとEUの関係悪化はさらに続く

西ヨーロッパ諸国との関係は4月16日の国民投票まで緊迫した状況が続くことが予想される。前回のコラムで筆者はEUにとってトルコは移民の防波堤であると書いたが、この点に関しても最近チャヴシュオール外相やオメル・チェリクEU担当大臣が「もしEU側がトルコ人に対するビザの自由化を認めないのであれば、2016年3月18日に結んだ協定を見直す可能性がある」と発言している。

トルコとEUの関係悪化は9月に予定されているドイツの連邦議会選挙まで続く可能性が高い。その際、トルコが移民の規制を盾にどこまでEU諸国を揺さぶるのか、それに対してEU諸国でナショナリスト政党を含め、どのような対応が見られるのか、今後も目が離せない状況にある。


今井宏平(日本貿易振興機構アジア経済研究所)


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