情で繋がり、情でつまずく保守の世界~森友学園以外にも繰り返されてきた保守の寄付手法~
ニューズウィーク日本版 / 2017年3月24日 19時20分
「保守界隈で著名な言論人や文化人を理事や広告塔として起用し、それを「梃子」として多額の寄付金を集める」手法を展開し、その条件として「三部作」の製作を確約しながら、9年を経てもなお半分強(2/3)しか約束を果たしえないのは、寄付者からの批判を受けても致しかたない事例であろう。
もっとも森友学園の様にこの案件は自治体から補助金を詐取しようという試みではないし、純然たる映画製作構想であった。往々にして芸術作品の製作に長期の時間がかかるのはよくある事例(例:2015年に世界公開されて熱狂的な支持を得、興行的にも大成功したジョージ・ミラー監督の『マッドマックス4(怒りのデスロード)』は、なんと構想17年を要している)であるから、一抹の酌量の余地はあることは、彼らの名誉のためにも弁護しておかなければならない。
しかしながら、この時「賛同人」としてあたかも広告塔に使われた人々は、みなこの「公約違反の疑い」に一様に沈黙を守っている。
狭い保守界隈=保守ムラが故に、理論整然たる理詰めの反撃や論争より、「情」が勝って、「まあまあ、そんなに批判しては可哀想ではないか。まあまあ良いではないか。おなじ保守同士波風を立てない方がよいではないか」というムラ的馴れ合いが先行したからではないか。
2007年度、あれだけ大々的に約束した「三部作制作の公約」が実現するめどは、具体的にいつになるのか判然としていない。そしてまた、寄付金が現在に至るまでどのような名目で支出されているのか、その具体的な内訳も、公にされていない、とする批判者も存在する(対して製作者側は、これについて数次に亘って詳細に反論を行っている)。
2)田母神俊雄氏都知事選立候補のために寄付金 約1億3200万円 2014年の事例
猪瀬直樹都知事(当時)が医療法人・徳洲会から不正な献金(貸付)を受けたとされる疑惑で辞任した出直し都知事選に立候補したのは、2008年にホテルグループ・アパが主催する「真の近現代史観論文」の第一回最優秀賞を受賞し、一躍時の人となり保守界隈の寵児となった元航空幕僚長・田母神俊雄氏であった。
田母神氏の支持母体は、前述で『南京の真実』を製作した母体、日本文化チャンネル桜が傘下に持つ政治団体『頑張れ日本!全国行動委員会』で、田母神都知事選出馬のために急遽、政治資金団体「東京を守り育てる都民の会(後、田母神としおの会)」が結成され、『南京の真実』の時と同様、保守界隈=保守ムラが全精力を傾けて持てる力のすべてを総動員した総力戦の様相を呈した。
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