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亡命ロシア下院議員ボロネンコフ、ウクライナで射殺

ニューズウィーク日本版 / 2017年3月24日 15時28分

<反プーチン派の元下院議員が亡命先のウクライナで殺された。ロシアにもウクライナにも殺す理由はあり、非難の応酬が続いている>

ロシアの元下院議員デニス・ボロネンコフが木曜、ウクライナの首都キエフの中心部にあるプレミア・パレス・ホテルから出てきたところで銃撃を受け、弾を4発受けて死亡した。ボロネンコフは2016年10月、著名なオペラ歌手の妻マリア・マクサコワとともにウクライナに亡命し、国籍を取得。ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と3年前に失脚した親ロシア派のビクトル・ヤヌコビッチ元ウクライナ大統領を公然と批判してきた。

【参考記事】止まらないプーチンの暗殺指令


ボロネンコフはロシア元下院議員イリヤ・ポノマレフに会いに行くところを襲撃された模様だ。ポノマレフは、ロシアのクリミア併合をめぐるロシア下院の採決で反対票を投じた人物。ボロネンコフは当時採決で賛成票を投じたため、彼の亡命を受け入れるという政府の決定には国民の不満もあった。

ポノマレフはフェイスブックにこう投稿した。「言葉が出ない。誰が殺したかは明白だ。ボロネンコは、ロシア当局にとって危険な追及者だったということだ」

ボロネンコフのボディガードは銃撃戦で負傷、容疑者も撃たれて病院で死亡した。

「露特殊部隊の手口」

事件後、ウクライナとロシアは一斉に非難の応酬を繰り広げた。ウクライナのペトロ・ポロシェンコ大統領は声明を発表した。「キエフの中心部でデニス・ボロネンコフが暗殺されたのは、政治的な理由で彼を亡命に追い込んだロシアによる国家テロだ」。殺害の手口は「ロシア特殊部隊の教科書通り」と批判したうえで、こう続けた。「ロシアによるウクライナ侵攻や、ロシア軍の侵攻でビクトル・ヤヌコビッチが果たした役割について、ボロネンコフは重要な証人の1人だった」

【参考記事】ロシアの野党指導者ナワリヌイ、大統領選立候補困難に

ウクライナ内務省のアルテム・シェフチェンコ報道官は、警察当局に対して暗殺事件として捜査開始を命じたことを明らかにして言った。「今回の殺害で得をするのは、まちがいなくロシアだ」

ボロネンコ自身、ロシアから何らかの報復を受けることは覚悟していた。殺害の数日前、米紙ワシントン・ポストのインタビューで彼はこう発言した。「私たち夫婦はロシア国内で危険人物に仕立て上げられている。いつか許される日がくるとは思えない」

【参考記事】ウクライナはジャーナリストを殺す?



ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官は、ロシアの暗殺部隊の関与を疑う見方を「馬鹿げている」と一蹴し、殺害はウクライナ政府に国民の身の安全を守る能力がない証だと批判した。

ボロネンコフ銃撃の2日前には、ロシアの内部告発者セルゲイ・マグニツキーの遺族の代理を務める弁護士のニコライ・ゴロコフが、アパートの4階から不可解な転落をして重傷を負った。マグニツキーは、ロシア政府の巨額横領事件を内部告発し、2009年に拘留施設で死亡した人物だ。ロシア司法当局の関係者は「犯罪の証拠がない」と言ったと伝わるが、タイミングが怪しい。ゴロコフが転落したのは、マグニツキーが暴露した横領事件のことでモスクワの裁判所に控訴する前日だった。

From Foreign Policy Magazine



エミリー・タムキン

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