韓国の次期「左派大統領」が進む道
ニューズウィーク日本版 / 2017年3月28日 11時0分
文在寅が当選しても外交では手足を縛られるか Kim Hong-Ji-REUTERS
日韓関係は、左派政権の下で一層冷え込む可能性がある。左派は、保守派政権の対日政策を批判し、15年12月の日韓「慰安婦」合意の破棄も示唆している。
ソウルの日本大使館と釜山の日本総領事館の前に設置された「少女像」の問題に関しても、左派の大統領が解決に動くことは考えにくい。左派政権は、日韓が軍事情報を共有するための「秘密情報保護協定(GSOMIA)」を覆す可能性もある。
しかし現実には、そこまでの事態に至る可能性は低いだろう。THAAD(高高度防衛ミサイル)の配備をめぐり、中国との関係が緊迫しているときに、日本と対立する道を選ぶのはあまりにリスクが大きい。
次期政権にとって政治的に最も無難なのは、前政権がまとめた「慰安婦」合意を非難しつつ、いったん結んだ国際合意を今更破棄できない、という立場を取ることだろう。GSOMIAに関しても同様に、声高に批判するだけで、実際には何もしないのが一番安全な道だ。
【参考記事】朴大統領失職後の韓国と蔓延する「誤った経済思想」
次期政権が日本との対立を避けざるを得ないほど、いま韓国と中国の関係は悪化している。韓国へのTHAAD配備に対する中国の反発は極めて強硬だ。
文はTHAAD配備反対派だったが、中国の強硬姿勢を前に、それを白紙に戻すのは難しい。そんなことをすれば、韓国が中国の圧力に屈した、あるいは自国の安全保障政策に関して中国に「拒否権」を与えたと見なされてしまう。いくらハト派の大統領でも、それは受け入れ難い。
そうなると、差し当たりは中国との対立が続くことになる。その状況は、少なくとも向こう1年間は変わらないだろう。だとすれば、この時期に日本との関係を悪化させるという選択は考えにくい。
文は、朴政権よりも親北、親中、反日の路線を取りたいと思っているだろう。これまで韓国の左派政権はそうしてきた。しかし、政権の手足を縛る要素は昔よりずっと強まっている。文には、自身の望みどおりに振る舞うだけの自由はない。
[2017年3月21日号掲載]
ロバート・E・ケリー(本誌コラムニスト、釜山国立大学准教授)
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