民営化30年の明暗、JR北海道とJR四国の苦境 - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ニューズウィーク日本版 / 2017年3月30日 17時40分
ですが、夢が実現した後、実際に起きたのは全く予想外のことでした。架橋の前には、多くの全国企業が高松に「四国支店」を構えていたのですが、橋ができて便利になると岡山などに「中四国支店」として拠点を統合してしまい、四国の「支店経済」は衰退しました。また、徳島や香川の消費者は簡単に梅田までバスで行けるので、百貨店など地域の小売業も衰退したのです。
さらに道路網の整備があります。まず四国では四県を結ぶ高速道路網が整備され、そこに廉価な高速バス網ができています。それが3つの本四架橋によって本州と結びついています。また軽四などによるモータリゼーションも進んでいるので、これでは、鉄道が衰退するのは当たり前です。
北海道の場合は、まだ未整備の区間が残っていますが、四国と同じように高速道路の整備が進んでいます。また、地元への経済支援ということで、完全立体交差の高規格道路を通行料無料で整備している区間もあり、モータリゼーション加速を後押ししている格好です。
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簡単に言えば、北海道の場合は札幌一極集中、四国の場合は本州への「ストロー効果」によって、周辺部の経済が衰退していったにもかかわらず、鉄道網に加えて高速道路網や地方空港の整備を進めて、交通手段が多角的に整備された。そこで、固定費の高い宿命を抱えた鉄道事業に、大きなシワ寄せが及んでしまったという構図です。
これは、一鉄道事業者の責任を問うようなレベルを超えた話で、「国土計画の深刻な失敗」としか言いようがありません。つまり、国鉄民営化の「影の部分」というような、鉄道行政だけの問題ではないのです。
では、具体的な対策として何が考えられるか、ということになります。
まず、北海道の高橋はるみ知事が指摘しているように、直接の赤字補てんのような形で公的な支援をすることは得策ではないと考えられます。経営の健全性を確保する観点からも、永続性という観点からも避けるべきでしょう。
私は「上中下分離方式」を提案したいと思います。鉄道事業を「上」つまり実際の鉄道運行とメンテナンス、「中」として車両や電化設備など償却期間の比較的短い固定投資、そして「下」は線路や橋梁、トンネル、さらには駅舎など償却期間の長い固定設備の3つに分割して、「下」は国や道県が保有する、「中」は地元資金や企業・個人などの自発的支援を募って資金を調達するという考え方です。
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