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【写真特集】ヤジディ虐殺の悲劇はなぜ起きたのか

ニューズウィーク日本版 / 2017年4月5日 18時15分



さらに、ヤジディ教徒は悪魔を崇拝し、倫理観のない「野蛮」な民族だという誤った認識を持つ人は、一般的なイスラム教徒の中にも少なくない。私の友人にも「彼らは遅れた人々」「汚くて好戦的だという印象を子供の頃から持っている」といった偏見を語る人はいる。

近年は同じ職場で働き、一緒にピクニックに出掛け、結婚式に招待するなどうまく共存しているようにみえるが、心の底には決して縮まらない距離があったのかもしれない。トルコでテレビのニュースを見る私の隣で、トルコ人の友人が「ISISの行動は最低だが、ヤジディにもあまり同情できない」とつぶやいた言葉が忘れられない。

【参考記事】モスル西部奪回作戦、イラク軍は地獄の市街戦へ

ISIS戦闘員たちは、テロリストになる以前からヤジディ教徒に対する差別感情を抱いていたのだろう。それがISISで「聖戦」という大義を手にしたことで暴発し、虐殺につながったのではないか。

社会的弱者や少数派への差別感情は、どこにでも存在するものだ。ヤジディの悲劇は特殊な場所の特殊な状況が生んだものではなく、根底には私たちの社会にも存在する普遍的な問題があるのではないだろうか。

林典子(フォトジャーナリスト)


ISISの戦闘員が破壊したシンジャール山のマーウィア寺院


聖地ラリッシュの建物の壁にはヤジディ教の神聖なシンボルである孔雀像を描いた宗教画が


<ズィーナ(1997年生まれ)>14年8月にシンジャール山へ避難し、米軍やクルド人兵士からの救援物資で生き延びた。2カ月後に長男ビワを出産したが、数カ月後に夫がISIS戦闘員に銃殺される。今後も夫が眠るこの地から離れる気はない


ズィーナと夫の結婚式の記念写真


<ヤジディの女性兵士>シンジャール山でISISに応戦し自分たちを守ってくれたクルド労働者党(PKK)の女性兵士を見て、PKKの組織に入ったヤジディの女性は多い

訓練中のヤジディ女性兵士が暮らす部屋


ISISに破壊された家や村からシンジャール山頂へ続く道にはさまざまな物が置き去りにされている


置き去りにされたトラックのおもちゃ


<アイダ(1994年生まれ)>自宅から家族と逃げ出す途中でISIS戦闘員に見つかり、子供と共に戦闘員の家で生活することを強要された。だが、夫やその友人の助けを得て脱出に成功し、15年までイラクの都市ダフーク近郊の民家で避難生活を送っていた


<アイダ>夫と共に難民としてドイツに渡った。彼女はかつてヤジディ教徒の伝統的な芝居などをする劇団に所属していた

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