ロシアテロ、寿司バーで働いていた容疑者の被差別人生
ニューズウィーク日本版 / 2017年4月5日 19時20分
ジャリロフは、ウズベク人の家に生まれた。ウズベク人はキルギス南部で長らく差別に直面してきた民族で、オシは2010年6月にウズベク人とキルギス人の間で起きた民族間衝突の舞台となった。その衝突では数百人が死亡し、さらに数十万人が住む場所を失った。
【参考記事】キルギスで民族間衝突が起きるワケ
一家が暮らしていた町が民族間衝突により破壊されたのち、10代のジャリロフは父によりサンクトペテルブルグに連れてこられた。お金を稼いで新居の支払いを助けるためだった。年少でロシアに移住したため、ジャリロフがキルギス国民だったことはない、とアブディルダエフは声明のなかで述べている。
ロシア当局は、ジャリロフの単独犯行なのか否かについてまだ調査を行っている最中だが、彼の犯行は、ロシア政府およびより広い範囲に政策的影響を与えることは間違いない。今回の爆発は、中央アジア人によってロシアで遂行された初のテロ事件と見られている。
ロシアでは現在、何十万人もの中央アジア人が暮らしている。職を求めて移住してきた人々だ。彼らの多くは、建設現場など、低賃金で劣悪な条件の労働環境で働いている。キルギスは、所得を他国からの送金に頼る率が非常に高い国の1つであり、2015年には、海外からの送金がGDPの約3分の1にも相当した。
こうした経済状況は、最近のロシアルーブル安のせいで緊張を生み出している。昨年は、キルギスに送金されるお金の価値が約3分の1低下した。
【参考記事】プーチンのロシアでは珍しくない凄惨なテロ<年表>
勧誘はロシアで
ジャリロフがなぜ自爆テロを行ったのかはまだわからないが、出稼ぎ労働や経済的な極限状態が中央アジア人の過激化の大きな原因になっているのは確かだ。研究によれば、シリアで過激派に入った中央アジア出身者の多くは、ロシアで働いているときに戦闘員として勧誘されたり過激思想に染まったりしている。中央アジア全体に共通する厳しい宗教的戒律も、反動としての過激化を生んでいるという。
【参考記事】ISISのグローバル・テロ作戦が始まる
旧ソ連諸国の出身者は、ISIS戦闘員で3番目に多い。1位は中東・北アフリカで、2位は西ヨーロッパだ。
カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタンといった中央アジア諸国からの戦闘員は、1200人にのぼる。
(翻訳:ガリレオ)
From Foreign Policy Magazine
リード・スタンディッシュ
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