米軍がシリアにミサイル攻撃、化学兵器「使用」への対抗措置
ニューズウィーク日本版 / 2017年4月7日 14時10分
<アサド政権が化学兵器を使用したと判断したアメリカがシリアの空軍施設をミサイル攻撃した。アサド政権を支援するロシア、イランとの緊張が予想される>
米軍は6日夜、シリア・アサド政権の空軍基地を、約50発の巡航ミサイルで攻撃した。6年前にシリア内戦が始まって以来、米軍が直接アサド政権の軍事施設を攻撃するのはこれが初めて。
米軍当局者の話として、ワシントン・ポストなどアメリカの複数の報道機関が現地時間6日夜に一斉に報じた。
ミサイル攻撃は、今週アサド政権が反体制派の拠点であるイドリブ県で空爆を行い、化学兵器を使用して多数の住民を殺害したと見られることへの対抗措置。ただ今回の攻撃によってアメリカは、アサド政権を支持するロシアやイランと直接に衝突するリスクを負ったことになる。
ドナルド・トランプ大統領は声明を発表し、攻撃について「国家安全保障上の重大な事案だ」とし、「すべての文明国がアメリカと手を組み、シリアの虐殺と流血、さらにすべてのテロ行為を終わらせる」ことを呼び掛けた。
トランプ政権は、これまでアサド政権については関与しない方針だった。ティラーソン国務長官は先月末、シリアの政権は「シリア国民が決める」ことだと述べていた。しかし今週のアサド政権の空爆で化学兵器が使用された疑惑が持ち上がったことから、トランプ政権幹部は一気に強硬姿勢へと傾いたようだ。
一方でアサド政権側は、化学兵器の使用を否定している。
【参考記事】シリアの子供たちは、何度化学兵器で殺されるのか
シリア攻撃に使われた米軍の巡航ミサイルは、地中海東部に配備されている2隻の米海軍駆逐艦から発射された。今週のアサド政権の空爆の拠点となった、シリアのシャイラート空軍基地が攻撃の標的となり、滑走路をはじめ爆撃機、格納庫、燃料庫を爆撃したという。
シリア情勢は、この6年続く内戦で反体制派がアサド政権と敵対している他、アメリカをはじめとした有志連合がテロ組織ISIS(自称イスラム国)の掃討にあたっているが、いまだにその勢力が残存し、混沌としている。
トランプ政権内では攻撃に際して、「情勢分析を継続して麻痺状態に陥る」ことを危惧して直ちに軍事行動を開始するよう主張する意見があった一方で、ロシアの反応など、軍事行動の二次的、三次的な影響を憂慮する意見もあったという。
今後米軍が、アサド政権に対して攻撃を拡大するかどうか、現時点では不明だ。
【参考記事】トランプ外交の方針転換は「正常化」の兆しなのか
米上院軍事委員会の委員長を務める共和党のジョン・マケイン上院議員は声明を出し、今回の作戦が「アサド政権に対してアメリカがもう手をこまねいていることはない、という重要なメッセージを送った。プーチンのロシアの支援を受けるアサド政権は、化学兵器とたる爆弾(編集部注:火薬と燃料をつめた爆弾。広い範囲に被害を及ぼすために無差別攻撃を引き起こす)でシリアの民間人を虐殺している」と、述べている。
さらにマケインは声明で、トランプ政権に対して「同盟国などと協調して新たに包括的な戦略を構築し、シリアでの戦闘に終止符を打つ」ことを求めた。
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
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