トランプはロシア疑惑をもみ消すためにシリアを攻撃した?
ニューズウィーク日本版 / 2017年4月10日 16時11分
【参考記事】シリアの子供たちは、何度化学兵器で殺されるのか
だが、トランプの態度が一変したのがひとえに正義感のせいだと思うのは間違いだろう。アサドに手を出さないという最初の方針を変えざるを得ない多くの理由があったのだ。バラク・オバマ前大統領が2013年、事前の警告にもかかわらず化学兵器を使ったアサドに武力介入を行わなかったことを、あまりに多くの共和党員が嘲笑していた。
党派で分断された政治のパラドックスで、2013年のトランプは武力介入に反対だったが、2017年には武力介入をしないことこそがあまりに犠牲の大きい賭けになってしまったのだ。
「ある日我々はリビアを空爆し、民主主義で人々を救うために独裁者を排除した。翌日我々は、国が崩壊し人々が苦しむのを見た」と、トランプは2016年4月に語った。「我々は人道国家だ。だがオバマと(ヒラリー・)クリントン(元国務長官)の軍事介入が残したのは、弱さと混乱と無秩序だけだ」
もしシリアでのトランプがこの時と同じ考えで行動していたら、オバマと比較されていただろう。トランプの支持基盤のかなりの部分が、独裁者の虐殺者に屈した弱虫としてトランプを批判しただろう。
さらにアサドの狡猾なスポンサーであるロシアにも屈することになっていた。トランプ政権はロシア政府との間にあまりに疑惑が多過ぎて、世界の目前で民間人に化学兵器が使用されたのに何もしないとなれば、ロシア政府との間にやましいつながりがあったからだと思われてしまう。
トランプ政権のロシアとの関わりが明るみに出れば、これまでトランプが推進しようとしてきた政策どころの騒ぎではなくなる。ロシア疑惑の話を止めるのは、トランプ政権の最優先課題の一つだった。
最後に、トランプの支持率は先週は36%と、歴代大統領の就任1年目の数字として最低を記録した。
【参考記事】トランプ支持率最低、白人男性が逃げ出して
もし支持率が重要と思えば、指導者は何をしてでもそれを支えようとする。トランプとプーチンは二人ともこのタイプのようだ。ここ数年、プーチンは外交政策を使って国内の支持率を高めてきた。今は米露ともが、国内での支持をつなぎとめるために外交でリスクを冒している。
いまアメリカとロシアの間には、緊張をエスカレートさせる力が働いている。米露両国の指導者はどちらも自称実務主義者だが、実は二人とも激しやすく、弱く見られることを好まない。古典的な武力衝突パターンだ。
国際社会の分別ある指導者には、両国が対話路線に復帰するよう促す責任がある。
Maxim Trudolyubov is a senior fellow at the Wilson Center's Kennan Institute and editor at large of Vedomosti, an independent Russian daily. The opinions expressed here are solely those of the author.
This article first appeared on the Kennan Institute site.
マクシム・トルボビューボフ(米ウッドロー・ウィルソン・センター/ケナン研究所上級 研究員)
-
-
- 1
- 2
-
この記事に関連するニュース
-
トランプ氏が痛烈批判 バイデン氏の「弱腰」外交に根強い懸念 中朝露などの増長招いた
産経ニュース / 2024年7月14日 12時0分
-
「アメリカの同盟国だから、中国は日本を攻撃しない」は甘い…ロシア・ウクライナ戦争でわかった「核抑止」の現実
プレジデントオンライン / 2024年7月4日 9時15分
-
「トランプ陣営の世界戦略がさらに明るみに」その5(最終回)日本との同盟を超重視
Japan In-depth / 2024年6月28日 19時0分
-
イランの核武装への兆候か? イスラエルとの初交戦と大統領墜落死が示すもの
ニューズウィーク日本版 / 2024年6月27日 12時40分
-
北朝鮮の「兵器工場化」を目論むプーチン大統領 ウクライナ支援を拡大する西側に最終核戦争の恫喝
東洋経済オンライン / 2024年6月25日 9時0分
ランキング
-
1「慰安婦」強制連行説は「日韓離間工作の道具」 韓国で像撤去を求める朱玉順氏が批判
産経ニュース / 2024年7月20日 20時26分
-
2トランプ氏銃撃、動機は不明 発生1週間、警備当局に批判も
共同通信 / 2024年7月20日 18時47分
-
3キーシン氏を「外国の代理人」指定…「我々はプーチンとその取り巻きより長生きする」とSNS投稿
読売新聞 / 2024年7月20日 17時2分
-
4ロ侵攻、化学兵器使用と相互非難 国際機関「深刻な懸念」
共同通信 / 2024年7月20日 15時20分
-
5キリスト教「福音派」トランプ氏を熱狂的に支持するワケとは?
日テレNEWS NNN / 2024年7月20日 21時25分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)