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迫るトルコの国民投票:憲法改正をめぐる政治力学

ニューズウィーク日本版 / 2017年4月11日 15時15分

これは公正発展党にとっても願ってもないチャンスとなった。憲法改正に関しては、大国民議会の全550議席中367議席の賛成があれば議会を通過し、大統領が承認するだけで改正となる。また330議席の賛成があれば、議会通過後、国民投票でその是非を問うことが可能である。公正発展党は316議席を有しているが、それだけでは367議席はおろか330議席にも達しない。そのため、40議席を有する民族主義者行動党の協力は公正発展党にとっても憲法改正に関する国民投票を実施するために必要不可欠であった。

親イスラーム政党であるとともに中道右派政党でもある公正発展党と、極右のナショナリスト政党の民族主義者行動党の「ナショナリズム同盟」は12月10日に21項目の憲法改正を大国民議会で審議することを要請し、2017年1月20日に両党の議員339人の賛成で18項目の憲法改正案が大国民議会で承認された。



「ナショナリズム同盟」の綻び

4月16日の国民投票まで1週間を切ったが、憲法改正の実現は五分五分と見られている(注:憲法改正に反対しているのは、最大野党の共和人民党とクルド系政党の人民民主党である)。賛成派が苦戦している要因の1つとして、思ったよりも民族主義者行動党の支持者の賛成票が伸びていない点が指摘されている。確かに、最近の2015年11月の総選挙の公正発展党と民族主義者行動党の総得票率は60.4%、公正発展党が単独与党となれなかった同年6月の総選挙の総得票率でも57.2%となる。

しかし、40議席を有しながら1月20日の憲法改正の承認でも造反者が見られたように、民族主義者行動党の議員および支持者の中にはバフチェリの公正発展党への接近を歓迎していない者たちもいる。バフチェリは党内での影響力を再度高めるためにエルドアン大統領と公正発展党に近づき、もし憲法が改正されれば新設される副大統領の職に就く可能性も指摘されている。しかし、もし憲法改正が承認されない場合、エルドアン大統領と公正発展党から名指しで批判されることは必至であり、党内での影響力も地に落ちるだろう。

クルド人を取り込む戦略

エルドアン大統領とビナリ・ユルドゥルム首相は民族主義者行動党の支持者が必ずしも憲法改正に賛成していない現状を受け、国内ではクルド人からより多く票を獲得する戦略も実行に移している(国外では、以前の「緊張が高まるトルコと西ヨーロッパ諸国」で触れた西ヨーロッパに住むトルコ人の票田の開拓を目指した)。あまり知られていないが、公正発展党に投票するクルド人は多い。クルド人と一口に言ってもイスラームに傾倒している保守的なクルド人もいれば世俗的なクルド人もいる。保守的なクルド人は公正発展党の重要な票田である。

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