「一つの中国」原則で米中に圧殺される台湾
ニューズウィーク日本版 / 2017年4月18日 11時0分
<中国の軍事圧力とアメリカの気まぐれの狭間で翻弄され、台湾は単なる二大国間の交渉の駒にされてしまうのか>
トランプ米政権が最新鋭ステルス戦闘機F35とTHAAD(高高度防衛ミサイル)の台湾への売却について検討を始めたとのニュースが報じられたのは、中国の習近平(シー・チンピン)国家主席の訪米直前のことだった。
中国福建省沿岸から海峡を越えて人民解放軍のミサイルが飛んできたら、台湾はどう防衛するのか。中国のミサイル精度はいいかげんでも数では圧倒しており、「ミサイルの雨」になるだろう。
中国海軍の空母「遼寧」が台湾島の東側から戦闘機を飛ばしたら、台湾はいかに対処するのか。遼寧はウクライナから購入した鉄くず同然の未完成品を改修したにすぎず、鈍足と揶揄されるが、台湾を一周して爆撃機を飛ばすぐらいの能力はある。
こうした国家の存亡に関わる危機は、蔡英文(ツァイ・インウェン)総統の頭痛の種でもある。トランプはこうした島国・台湾の悩みを解決しようとしたのだろうか。
「台湾が一番恐れているのは、アメリカと中国の間で交渉の駒にされてしまうことだ」――台北に滞在中の私に、ルーズベルト通りに面した会議室で台湾の政治家がこう語った。
米大統領の名前が冠された通りの名称は、台湾とアメリカの特別な関係を物語っている。1979年にアメリカは一方的に台湾との外交関係を断ち、「赤い北京政府」を中国の正統政権として認めた。台湾を自国の一部と見なす「一つの中国」原則を北京とワシントンはそれぞれ異なる意味で掲げることで、中国と台湾が対峙する台湾海峡の平和を維持してきた。
【参考記事】トランプは習近平とチョコレートケーキを食べながらシリアを攻撃した
揺さぶりか相思相愛か
しかし、今や最大の問題は台湾に住む大半の人々が自分は台湾人であり、「中国人」だと意識しなくなったという事実だ。アメリカだけでなく日本もまた、玉虫色の「一つの中国」原則を国際的な約束事として守ろうとしている。
だが台湾にとって、日米のそのような姿勢は自らの意思が無視された外国からの圧力としか映らない。外交も所詮、自国の利益が最優先される。いつアメリカに裏切られるか、と台湾の政治家たちは日々危惧してやまない。
トランプは米大統領当選後の昨年12月初旬、北京よりも先に台北と電話で会談した。共産主義国家・中国への揺さぶりなのか、自由主義陣営の一員である台湾と相思相愛をアピールしたのか。その意図を誰も判断できないのがじれったい。
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
「対話」と「レッドライン」 習氏がバイデン氏との首脳会談でトランプ氏にメッセージ発信
産経ニュース / 2024年11月17日 17時28分
-
習近平氏が日中関係の「安定」に意欲表明 「改善、発展の重要な時期にある」
産経ニュース / 2024年11月16日 14時43分
-
習国家主席がトランプ氏に祝意表明、相互尊重・平和共存・ウィンウィンの協力関係の原則を堅持(中国、米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年11月8日 10時15分
-
トランプ外交政策が「やりたい放題になる」根拠 2期目は好き放題にできる環境が整う
東洋経済オンライン / 2024年11月7日 18時0分
-
米大統領選後のリスク、台湾にとって「最悪の状況」とは?―台湾メディア
Record China / 2024年11月6日 17時0分
ランキング
-
1日本人男児刺殺の男を正式に逮捕 中国警察、殺人容疑で
共同通信 / 2024年11月30日 12時41分
-
2イスラエル軍がレバノン南部を空爆、「停戦の合意違反に対応」と主張
読売新聞 / 2024年11月30日 13時0分
-
3焦点:戦闘員数千人失ったヒズボラ、立て直しには膨大な時間とコスト
ロイター / 2024年11月30日 7時52分
-
4《過激ファッションで物議》カニエ・ウェストと18歳年下妻、「丸出しで愛を誓う」仰天セレモニーを計画 海外メディアが報道
NEWSポストセブン / 2024年11月30日 7時15分
-
5中国・広州市で40匹以上の犬が毒殺される、背景に何が―香港メディア
Record China / 2024年11月30日 14時0分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください