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北朝鮮・シリアの化学兵器コネクション

ニューズウィーク日本版 / 2017年4月21日 12時10分

1点目は、シリアの「朝鮮鉱業開発貿易会社」(KOMID)の動向だ。同社はその主要幹部の大半が国連の制裁対象となっている。この会社は16年、北朝鮮の兵器代表団を数次にわたってシリアに呼び入れた。目的はミサイル・化学兵器の技術移転および防空システムの構築などを支援することだった。



2点目は、北朝鮮の貿易会社「富盛貿易」(Buson Trade)。同社は過去数年間、米国と欧州連合(EU)の制裁対象であるシリア軍需機関「科学研究調査センター」(SSRC)に対して、スカッドミサイルの関連物資を供給してきた。

3点目は、シリア駐在の北朝鮮銀行「端川商業銀行」の動向。同銀行は、国際社会の監視網を避けて、レバノンやロシアなどを足しげく訪問している。その目的はシリアで稼いだ武器輸出代金を北朝鮮に送金すること。つまり「資金洗浄」である。

以上の諸点から、今般のシリアによる化学兵器使用の背景で、北朝鮮が相当な役割を演じていることは否定できない。

【参考記事】米中会談、アメリカの目的は中国の北朝鮮「裏の支援」断ち切り

毒ガス搭載のミサイル、日本も警戒

さらに、北朝鮮国内でも極めて特異な動向が見つかっている。17年2月24日、韓国の国防部が国会で注目すべき証言をした。金正恩政権が昨秋、連隊級の生物・化学兵器部隊を創設したというのだ。韓国メディアの報道は地味な扱いだったが、事は重大である。

北朝鮮軍では、連隊は3個大隊で編成される。1個大隊が兵員約1000人だから、総員3000人規模に達する大規模な新部隊の創設となる。これまで大砲に詰める毒ガス砲弾は野戦部隊にも配備・保管されてきた。だが、生物・化学兵器の専門部隊創設は初耳だ。毒ガス兵器の運用方式をより迅速化・高度化し、大々的に実戦配備する意図がうかがえる。当然ながら、その運用形態には北朝鮮が2000基近く保有する短・中距離の弾道ミサイル(ノドン、スカッド、改良型スカッド)への搭載も含まれる。

この新たな部隊の創設に続いて、異様な事件が相次いで続いて起きる。17年2月の金正恩朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男氏がマレーシアで殺害された事件と4月のシリアでの化学兵器攻撃だ。前者ではVXガス、後者ではサリンが使用された。前者はテロ事件、後者は軍事攻撃という運用方法の違いはあれ、実戦使用された点では同じだ。

実は、上記した生物・化学兵器部隊の創設と前後して、北朝鮮国内で奇妙なうわさが住民の間に流れた。北朝鮮の秘密警察・国家保衛省が、収監中の政治犯のうち精神疾患を病む収監者の家族を訪ねては「親権放棄」の同意書を集めて回ったという。「患者死亡について異議を申し立てない」「遺体の返還を求めない」と誓約する内容だった。関係住民は生物化学兵器の「生体実験」を強く疑った。

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