ヘンリー王子が心の問題を告白 その背景にあるものとは
ニューズウィーク日本版 / 2017年4月24日 15時45分
このように心の健康を危ぶむ人が多くいるなか、その受け皿となる施設がきちんと機能できていないという問題もある。
心の問題を扱う受け皿不足
政府の監視機関である警察監察局は、毎年実施している警察活動に関する調査の中で、心の病に対してしかるべき機関が対応できていないため、警察が初動対応せざるをえない状況が多いと報告している。
報告書は「予防は治療に勝る」ということわざを挙げ、本来、うつやその他の心の問題から人が自殺を考えたり危険な行動に出たりする状況になる前に、介入することが大切であると指摘。しかし心の健康を扱う設備の不足により、結局は何かが起きてから警察が対応せざるを得ない状況になっていると説明している。
また、テリーザ・メイ首相は今年1月9日、国民の4人に1人が人生で一度は心の病を抱えるとし、学校や職場、コミュニティで心の健康に関する支援を強化する方針を発表していた。国営医療制度(NHS)に対し2020年までに年間100億ポンドを追加で投じるとメイ首相は主張していたが、NHSのスティーブンス最高経営責任者が「2018/19年のNHS支出は、イングランドの住民1人当たりで計算すると実質的には減額になる」と指摘し、同月下旬、大臣らがそれを認めたとインディペンデントが報じていた。
王子がダイアナ妃から学んだこと
英国王室は、「君臨すれども統治せず」の原則から、政治に口出しはできない。しかしハリー王子は、英国の心の問題を取り巻くこうした厳しい環境に、自らの苦しかった日々を重ね合わせ、王室ができる最も効果的な活動である「知名度を利用した慈善活動」を決意したのだろう。
単なる知名度の活用のみならず、王子が王室のタブーを打ち破り心の問題を赤裸々に告白したことで、世界中が王子の訴えに耳を傾けた。12歳の時に母親を亡くしたかつての少年は、時には政治的介入だと批判されながらも人道的見地から慈善活動に勤しんだ母親の背中から学んだことを、しっかりと実践しているようだ。
松丸さとみ
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