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おとぎ話『美女と野獣』が多様性に目覚めたら

ニューズウィーク日本版 / 2017年4月28日 18時40分



現代の子供は世界の多様性にどんどん目覚めている。幼いうちに自分は出生時の性とは違う性だと意識する子もいるし、同性の両親の下で育つ子もいる。だからこそ、性的少数派を控えめに描くのは問題だ。

ゲイの人物を登場させたコンドンの意欲は買う。しかし、これでは臆病過ぎる一歩としか思えない。ゲイという在り方はいまだに、多数派の異性愛者が受け入れやすい形に薄めて提示しなければならない存在なのか。同性愛者の観客はそんな感想を持ってしまうはずだ。

一方、俳優陣は素晴らしい。『ハリー・ポッター』シリーズ以来、初の大作に主演したワトソンも、スティーブンスもはまり役だ。エバンスは気取り屋のガストンを喜々として演じ、ギャッドの演技は笑いを誘う。

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最大の見どころは、しゃべる調度品に扮した助演陣。マッケラン、スタンリー・トゥッチ、オードラ・マクドナルド、ググ・バサ・ロー、ユアン・マクレガーら豪華キャスト。中でも、ティーポットに変身させられた料理人を演じるエマ・トンプソンの温かみのあるコックニー方言が最高だ。

アニメ版の名曲の魅力もしっかり再現している。ワトソンの歌声は時に怪しいものの、調度品が歌って踊るミュージカルシーンは素晴らしい。ファンにとってうれしいことに、アニメ版で主題歌を歌ったセリーヌ・ディオンも、本作のために作曲された「時は永遠に」であの美声を披露している。

ブラナーの『シンデレラ』に匹敵する美しい映像にも息をのむ。城のインテリアや衣装は細部まで工夫を凝らしており、CGの使い方も効果的だ。野獣の外見はリアルそのもの。特殊効果満載のミュージカルシーンは子供たちの心を奪うだろう。

遠い昔からあるおとぎ話に、『美女と野獣』は新しい命を吹き込んでみせた。



[2017.5. 9号掲載]
トゥファエル・アフメド


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