北朝鮮危機のさなか、米空軍がICBM発射実験
ニューズウィーク日本版 / 2017年4月27日 14時54分
<米空軍がカリフォルニア州の基地から南太平洋へICBMを試験発射。この時期になったのは偶然だというが、米朝間の緊張が高まるなかでの実施を危ぶむ声も>
米空軍は26日未明、核兵器を搭載していないICBM(大陸間弾道ミサイル)を数千キロ離れた南太平洋に着弾させる発射試験を実施した。目的はアメリカの核抑止力のテストだが、北朝鮮の核実験とICBM開発をめぐり、米朝間の緊張が高まるなかでの実施を危ぶむ声もある。
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試験を実施した米空軍地球規模攻撃軍団の発表によると、カリフォルニア州のバンデンバーグ基地から発射されたミニットマンIIIは予定どおり約6800キロ離れたマーシャル諸島の環礁近くに着弾した。空軍広報官のカーラ・パンプによると、このテストはICBMの精度と基本的な機能を試すもので、「信頼できる」結果が得られたという。
「ミニットマンは成し遂げるよう設計されたことをすべて成し遂げた」と、パンプは本誌に語った。
パンプによれば、こうしたテストは定期的に行われており、通常は3~5年前に計画される。今回のテストは昨年10月に実施される予定だったが、基地近くで森林火事が起きたために延期されたという。だが、このタイミングでの実施には疑問もつきまとう。
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アメリカのダブルスタンダード
カリフォルニア州に本部を置くNPO「核時代平和財団」のデービッド・クリーガー会長は試射に先立ち、24日に声明を発表。米政府は北朝鮮のミサイル実験を強く非難しながら、自国の試射は国防のためだと正当化しており、「これは明らかなダブルスタンダード(二重基準)」だと批判した。
6回目の核実験に踏み切る兆候を見せた北朝鮮に圧力をかけるため、ドナルド・トランプ米大統領は空母カール・ビンソンの派遣を決めた。朝鮮半島有事の可能性がにわかに現実味を帯びるなか、カール・ビンソン率いる米艦隊は西太平洋で日本の海上自衛隊と共同訓練を実施、朝鮮半島に向けて北上を続け、韓国海軍とも合同演習を行う予定だ。
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北朝鮮は韓国と日本を射程に収める弾道ミサイル約1000基と核弾頭20個を保有している。金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は今年初め、アメリカを攻撃できるICBMの開発計画が最終段階に入ったと宣言した。だが安全保障の専門家はこれには懐疑的だ。米航空宇宙メーカー、エアロスペースのジョン・シリングによると、北朝鮮がICBMを実戦配備できるのは2020年以降で、その前に大規模な試射を行う必要があるという。
ミニットマンIIIは全長ほぼ18メートル、重量約36トン。最高速度は時速2万4000キロ(マッハ23)で、約1万キロ離れた地上の標的を攻撃できる。アメリカはいちばん多いときで530基を保有していたとみられるが、10年にバラク・オバマ前大統領とロシアのドミトリー・メドベージェフ前大統領が締結した新戦略兵器削減条約(新START)に準じて18年までに450基まで削減される。
ただし、予定どおり削減が進むかは不透明だ。トランプはロシアのウラジーミル・プーチン大統領と就任後初の電話会談をした際、この条約の内容を側近に聞いて、「まずい取引」だと言ったと伝えられている。
トム・オコナー
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