中国は中朝同盟を破棄できるか?
ニューズウィーク日本版 / 2017年5月5日 20時30分
しかし今年4月6日、7日の米中首脳会談以降、米中蜜月となってしまった今では、中朝軍事同盟の破棄は北朝鮮に強烈な威力を発揮することになろう。つまり北朝鮮を絶望的なほど恐怖に追い込むだろうということだ。
この二つのカードを使ってしまうと、「威嚇」にならないので、「使うぞ」と見せつけながら北朝鮮を追い込み、「核拡散防止条約」参加を大前提として対話のテーブルに着かせることが肝要となる。アメリカは休戦協定を平和協定に持っていき、朝鮮戦争を完全に終わらせること。これが中国の望みではある。
しかし、二枚のカードを共に使ってしまえば、後は戦争になるにちがいない。これは宣戦布告に等しい。
その時にも、中朝軍事同盟がなければ、中国はいざとなったらアメリカ側に付き、米朝で北朝鮮を管理する政権を打ち立てることもできなくはない。ただ、この道を選ばないだろうと判断されるのは、日米同盟があるからだ。中国は、日本とはどんなことがあっても「組む」ことはない。
米露が完全には接近できないのも、日米同盟があるからだ。
こうしてパワーバランスが取れているという見方もでき、着地点は中国がこの二枚のカードを「さあ、使うぞ」と見せて、米朝を対話のテーブルに着かせることしかないだろうと筆者は思っている。
ただ「破棄するかもしれない」というメッセージを環球時報が公開した事実は、非常に大きい。
トランプ大統領の要望に応えた回答が、これだったのではないだろうか。
[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』『チャイナ・ジャッジ 毛沢東になれなかった男』『完全解読 中国外交戦略の狙い』『中国人が選んだワースト中国人番付 やはり紅い中国は腐敗で滅ぶ』『中国動漫新人類 日本のアニメと漫画が中国を動かす』など著書多数。近著に『毛沢東 日本軍と共謀した男』(新潮新書)
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
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遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)
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