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全国の図書館職員は、今や半分以上が非正規

ニューズウィーク日本版 / 2017年5月10日 14時50分

<図書館のニーズが高まる一方で、全国の図書館では非正規の職員が急増している。公共サービスの質の低下だけでなく、公共部門の賃金格差の問題も見逃せない>

博物館(美術館なども含む)の学芸員の存在を否定する政治家の失言をきっかけに、学芸員や図書館司書への関心が高まっている。

教育は大きく分けると「学校教育」と「社会教育」に分けられるが、後者の代表的な施設として図書館がある。全国の津々浦々に設置されている公共施設で、地域住民の生涯学習に寄与している。

そこには司書をはじめとした職員が置かれ、利用者のレファレンス等の対応にあたっている。図書館の職員数は1990年度では1万6331人だったが、2015年度では3万3155人に倍増している(文科省『社会教育調査』)。少子高齢化や社会変化の加速によって、生涯学習への需要が高まっているためだろう。

【参考記事】世界トップの教育水準を労働生産性に転換できない日本の課題

しかし、職員の中身はかなり変わってしまっている。<図1>は、図書館職員の従業地位の内訳を1990年度と2015年度で比較したものだ。それぞれの量を図形の面積で表している。



この四半世紀で図書館の職員は増えたが、増分の大半は非常勤の職員だ。専任職員は1万3097人から1万1448人に減ったが、非常勤職員は2106人から1万9511人と9倍以上に膨れ上がっている。今となっては、図書館職員の6割が非常勤だ。

図書館で「臨時」というプレートをつけた職員を目にすることが増えたように思うが、その印象は統計でも裏付けられる。雇用の非正規化が進んでいるが、官の世界も例外ではない。いやむしろ、民より官で顕著なのかもしれない。



図書館職員の非常勤率は地域によって異なっている。47都道府県の数値を計算し、地図に落としてみた。<図2>は、1990年度と2015年度の模様を比較したものだ。



1990年度は全体的に色が薄いが、2015年度は軒並み濃い色で染まっている。現在ではほとんどの都道府県で図書館職員の非常勤率が半分を超えている(長崎県では7割)。図書館職員の非正規化が全国的に進んでいることがわかる。

図書館職員の非正規化があまりに進むのは問題がありそうだ。よく言われるのは、サービスの質の低下だ。働く職員にすれば、低賃金労働の増加(常態化)を意味する。「官製ワーキングプア」という言葉もあるくらいで、官の世界では正規・非正規の賃金格差は凄まじい。

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