垂れ耳猫のスコフォがこの世から消える!? 動物愛護団体から残酷との声
ニューズウィーク日本版 / 2017年5月10日 18時0分
垂れた耳とまんまるの目で人気の猫、スコティッシュフォールドだが、繁殖を禁止させるべきだという動きが起こっている。
人気の垂れ耳は軟骨異常から
スコティッシュフォールドといえば、猫にしては珍しい垂れた耳が特徴で人気の品種だ。「YouTubeで最も視聴された動物」としてギネス記録認定されるほど世界的に人気を博している「まる」という名のあの猫の品種、といえばピンと来る人も多いだろうか。米国人歌手テイラー・スウィフトさんや英国人歌手エド・シーランさんなど、世界的な有名人がスコティッシュフォールドを飼っており、インスタグラムなどのソーシャルメディア(SNS)に頻繁に飼い猫の写真を投稿していることも、この品種の人気に拍車をかけている。
1960年代にスコットランドで偶然みつかった、耳の垂れた猫スージーが起源のスコティッシュフォールドだが、トレードマークの垂れ耳は実は軟骨の異常が原因で、そのため、関節の軟骨にも問題が生じる可能性があるという。
スコティッシュフォールドが骨軟骨異形成症を発症する遺伝子に関する研究を発表したシドニー大学の獣医内科専門家、リチャード・マリク博士はタイムズ紙に対し、スコティッシュフォールドは病気の状態を留めさせている品種であり、繁殖させるのは「残酷」で「倫理的に弁解の余地がない」と語っている。
タイムズ紙はまた、スコットランド動物虐待防止協会(SSPCA)が、スコットランド自治政府に対しスコティッシュフォールドの繁殖を禁止するよう求めているとも伝えている。SSPCAのマイク・フリン会長は、スコティッシュフォールドが健康面で深刻な問題を抱えることはよくあると指摘。動きたがらない、変わった姿勢や歩き方をする、手足が変形する、などは、軟骨や骨がきちんと成長しないことから、関節炎など痛みを伴う病気を発症していることが原因だという。
【参考記事】「ホントは、マタタビよりもゴハンよりも人間が好き」――猫より
スコットランド政府はペットの繁殖問題を考察
BBCによると、英国の血統登録団体の育猫管理評議会(GCCF)は1970年代、スコティッシュフォールドは耳に疾患や聴覚問題の懸念があるとして、この品種の登録を取りやめた。これをきっかけに英国でスコティッシュフォールドの人気は衰え、GCCFは現在でも登録を禁止しているという(他の団体での登録は可能)。
ブリーダーの中には反論する声もあり、タイムズ紙は世界最大の愛猫協会CFAのブリーダーの「厳選して交配することで、硬い尻尾や短い尻尾、骨病変などの問題は解決した」という声を、BBCは「健康上の問題の数は他の品種とそんなに変わらない」というスコティッシュフォールド繁殖歴10年のブリーダーの話を、それぞれ紹介している。
スコットランドでは現在、スコティッシュフォールドの繁殖は禁止されておらず、猫の繁殖に関しても制限はないものの、ペット福祉の見直しの一環として、繁殖の問題について考えているところだと、スコットランド自治政府報道官はタイムズ紙に語っている。
英国獣医師会のグドルン・ラビッツ氏はBBCに対し、健康など動物の生活の質よりも外見上のかわいらしさを優先して人がペットを選びたがる傾向は、SNSにより加速していると指摘。健康を損なってまで人工的に作られた猫ではなく、保護施設にも愛らしいペットになる猫はたくさんいる、と話している。
松丸さとみ
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