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ノルウェーの極右ポピュリスト政党は政権の座を維持できるか

ニューズウィーク日本版 / 2017年5月13日 10時0分

責任ある与党という立場になることで、これまで過激だった発言はトーンダウンした。リストハウグ移民・社会統合大臣を除いて、他の進歩党閣僚たちの言動は明らかに以前より過激でなくなっている。もし、今年の選挙結果次第で野党となった場合は、遠慮のない「進歩党節」が復活するだろう。

他党から嫌がられる傾向にある進歩党だが、アーナ・ソールバルグ首相率いる連立相手の保守党は、進歩党との協力体制の継続を望んでいる。



ノルウェーは政権交代が頻繁に起こる国だ。今年の選挙で与党入りできなかった場合、ポピュリスト政党はノルウェーでは成功できず、左派陣営が勝った、ということになる。

同時に、報道陣や小政党が指摘しているのは、「左派政権になっても、ポピュリスト政党が必要になる」ということだ。左派ポピュリスト政党の>「中央党(Sp)」は様々な要素が絡み、大きく支持率を伸ばしている。最大政党「労働党(Ap)」との連立政権となる可能性が高い。

中央党はもともと「農民の味方」といわれている愛国主義が強い党だ。農産物をはじめとして、なによりも「国産」を好む。環境政策に強くこだわらない党員もおり、留学生など外国人の支援には消極的だ。首都中心の政策を嫌い、地方に住む人々を味方につける。「実は、隠れポピュリスト政党だ」と昨年から警報が鳴らされているのだ。筆者も、中央党に関しては、「たまに進歩党みたいなことを言うな」と不思議な感触を以前から覚えていた。

「実はポピュリスト」と言われ始めた中央党のヴェドゥム党首。特徴的な笑い方が有名で人望があり、報道陣からの好感度は高い Photo:Asaki Abumi

移民に寛容なイメージが強い左派・労働党も、「我々の移民政策は進歩党とほとんど変わらない。違うのは、移民や難民に対する表現方法だ。我々はあのような言い方はしない」と主張している。意外かもしれないが、移民政策の方針が実は大きく変わらないのは本当だ。「労働党のほうが、まし」という戦略で有権者を説得する。

「ノルウェー・ファースト」、「我々にも進歩党のような厳しい移民政策が可能だ」と主張する傾向が強まりつつあるノルウェーの各政党。進歩党は、少しずつ他党に影響を与えているようだ。今年の選挙の行方が注目される。Photo&Text: Asaki Abumi


[執筆者]
鐙麻樹(ノルウェー在住 ジャーナリスト&写真家)
オスロ在住ジャーナリスト、フォトグラファー。上智大学フランス語学科08年卒業。オスロ大学でメディア学学士号、同大学大学院でメディア学修士号修得(副専攻:ジェンダー平等学)。日本のメディア向けに取材、撮影、執筆を行う。ノルウェー政治・選挙、若者の政治参加、観光、文化、暮らしなどの情報を数々の媒体に寄稿。オーストラリア、フランスにも滞在経歴があり、英語、フランス語、ノルウェー語、スウェーデン語、デンマーク語で取材をこなす。海外ニュース翻訳・リサーチ、通訳業務など幅広く活動。『ことりっぷ海外版 北欧』オスロ担当、「地球の歩き方 オスロ特派員ブログ」、「All Aboutノルウェーガイド」でも連載中。記事および写真についてのお問い合わせはこちらへ


鐙麻樹(ノルウェー在住ジャーナリスト&写真家)


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