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共和党はなぜトランプを見限らないのか

ニューズウィーク日本版 / 2017年5月17日 21時15分

ドナルド・トランプは、司法妨害をした初めての大統領ではないが、それを公の場で自慢した初めての大統領だ。

トランプがロシアと共謀し、選挙結果に影響を与えたかどうかはもはや問題ではない。アトランティック誌のデービッド・フラムも書いているように、それを証明するのは困難で、起訴するのはさらに難しい。しかしトランプはいまや、衆目のなかで司法を妨害し、証人を威嚇している。



アメリカの著名な憲法学者であるローレンス・トライブが指摘するように、これこそ弾劾手続きの引き金となってしかるべきだ。「これでも『司法妨害』のレベルに達しないと言うのであれば、司法妨害という概念そのものが空疎だということになる」とトライブは書いている。

また、トランプがロシアの外相らに最高機密を漏らしたのが本当なら、弾劾を求める理由が1つ増える。最高機密を漏らすのは大統領以外なら犯罪だ。大統領の場合でも弾劾の理由にはなる。

だが、弾劾裁判が始まる可能性は今のところ低そうだ。理由は簡単、議会の多数派である共和党議員の大半に、トランプを弾劾する気がないからだ。ウォーターゲート事件以来、もっとも深刻な大統領の権力乱用が起きたというのに、抗議の辞任をした政権メンバーは、ただのひとりもいない。

【参考記事】ニクソンより深刻な罪を犯したトランプは辞任する

ニッキー・ヘイリー国連大使にいたっては、「大統領は国のCEOだ。誰でも望む者を雇い、クビにすることができる」という見解をABCニュースに語ったほど。ヘイリーは合衆国憲法を読み直したほうがいいだろう。憲法にはCEOへの言及はなく、大統領には「法が誠実に履行されるように留意する」ことを求めている。

長官解任批判は290人中40人

コミー解任を勧告した張本人として解任の「下手人」に仕立て上げられたロッド・ローゼンスタイン司法副長官でさえ、抗議の辞職をすることもなければ、特別検察官の任命もしなかった。卑劣な大統領のせいで自分の名誉が傷ついても構わないようだ。

議会共和党290人のうちコミーの解任を批判したのは約40人。そのうち独立調査委員会の設置を求めたのは6人、特別検察官の任命を支持したのは1人だけだ。多くの共和党議員は批判どころか、解任劇を歓迎した。共和党のリズ・チェイニー下院議員は、トランプからコミーに解任を通告する書簡をわざわざツイッターに投稿し、「過去最高の解任通告」とコメントを添えた。

米政府外でも、トランプを見限り、反旗を翻す論客は少ない。2月の時点でトランプは辞任すべきだと主張していた著名な法学者リチャード・エプスタインまでが、コミー解任は正しかったと擁護。ジョージ・H・W・ブッシュ政権下で司法長官を務めたウィリアム・バーも、ホワイトウォーター疑惑で特別検察官を務めたケネス・スターも同じだ。スターはセクハラで訴えられたビル・クリントン元大統領が偽証したとして、弾劾に追い込もうとした中心人物なのだが。

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