ヨーロッパを遠ざけロシアを引き寄せたトランプのNATO演説
ニューズウィーク日本版 / 2017年5月26日 16時0分
テロの脅威に言及した一方で、ロシアの脅威には触れなかった。特にバルト三国にとっては、ロシア軍の侵攻は現実の脅威だ。いざというときは米軍が頼りだが、トランプは何の保証も与えなかった。
【参考記事】バルト3国発、第3次大戦を画策するプーチン──その時トランプは
「欧州側には期待外れの演説だった」と、ドイツ・マーシャル基金の安全保障専門家デレック・チョレットは言う。「加盟国は将来に深刻な不安を抱えている。ロシアは存在に関わる脅威で、ヨーロッパは毎日その脅威と向き合っている」
安全保障の専門家やアメリカの政府関係者は、トランプの怠慢な態度に衝撃を受け、手厳しく批判する。
「トランプはヨーロッパの同盟国を差し置いて、改めてプーチンに味方した」と米シンクタンク、大西洋協議会のNATO専門家ホルヘ・ベニテスは言う。「加盟国が抱える多くの疑念、恐れ、不安を増大させただけだ」
「トルーマン以降のアメリカ大統領は例外なく、第5条に従い、アメリカはヨーロッパを防衛をすると誓ってきた。トランプは大きな過ちを犯した」と、元米NATO大使のニコラス・バーンズはツイッターに投稿した。
アメリカがヨーロッパを防衛しているのはアメリカのためでもあるのに、防衛費負担のことをねちねち言い続けると、思わぬ反発も招きかねない。「トランプに屈する姿など本国に見せられるか、と言う首脳も出てくるかもしれない」と、1月まで米国防総省のNATO担当責任者を務めたジム・タウンゼンドは言う。「これは弱い者いじめだ。アメリカの大統領にふさわしいやり方ではない」
From Foreign Policy Magazine
【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル! ご登録(無料)はこちらから=>>
ロビー・グレイマー
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
バイデン氏、ウクライナのNATO加盟支援で大きな到達点 おぼろげな「勝利への道」
産経ニュース / 2024年7月12日 18時46分
-
英新首相、NATO加盟国に国防費増額呼びかけ 「危険な時代」
ロイター / 2024年7月12日 9時38分
-
「よく知った人なのに誰だかわからない」──NATO首脳は前からバイデンの知力低下を知っていた
ニューズウィーク日本版 / 2024年7月11日 18時19分
-
NATO首脳、関心はトランプ2・0の欧州・ウクライナ プーチン氏に妥協の懸念も
産経ニュース / 2024年7月11日 6時38分
-
NATO、ウクライナの防空強化 米大統領「対ロシア結束」誇示
共同通信 / 2024年7月10日 11時56分
ランキング
-
1イスラエルの入植活動は国際法違反、ICJが勧告 イスラエル反発
ロイター / 2024年7月20日 1時26分
-
2世界的システム障害、復旧になお数日か 米政権も調査に
ロイター / 2024年7月20日 6時50分
-
3バングラデシュ全土に夜間外出禁止令発出へ…政府はネットを遮断、デモ死者105人に
読売新聞 / 2024年7月20日 12時31分
-
4米サイバーセキュリティー企業CEO、世界的システム障害めぐり「問題を修正、まもなく復旧する」と謝罪
日テレNEWS NNN / 2024年7月19日 22時56分
-
5バイデン撤退論が米民主党で急拡大、要求の議員計35人に 本人は選挙戦継続訴える
産経ニュース / 2024年7月20日 8時41分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください