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AIで安心な空の旅をもう一度

ニューズウィーク日本版 / 2017年5月30日 10時30分

航空会社は深刻な泥沼に陥っている。97年と比べて航空運賃(インフレ調整後)はほとんど変わらないのに、石油価格は60%近く上昇(燃料費は航空会社にとって最大のコストだ)。なのに価格競争のプレッシャーが強く、運賃を値上げできないから、座席を狭くし、超過料金で稼ぐしかない。

ネットでレストランやアパートを検索するときのように、航空券も利用者が自分好みの条件を入力して検索できるようになれば状況が変わるかもしれない。そう語るのは、『スーパー消費者』の著者で成長戦略に詳しいエディ・ユン。例えば足元スペースの広さ、乗務員のサービス、機内食の質についてのレビューの星の数などだ。



ユンによれば、ほとんどの製品カテゴリーで「価格だけを満足度の基準にしている消費者は少数」だと言う。にもかかわらず、運賃以外の条件に基づいてフライトを選べるサイトは多くない。

だが乗客の不満が限界に達するなか、最先端テクノロジーの力による新たなビジネスが航空業界に大規模な変化を迫る可能性が浮上している。その好例がサーフエアによる定額制の飛行機乗り放題サービスだ。

全8座席の小型機を使ったこのサービスは、プライベートジェット用のターミナルを利用する。空港利用時にありがちなセキュリティーチェックの長い列や混雑する搭乗ゲート、スイーツの誘惑とは無縁だ。

ハイヤー予約サービスのウーバーと同様に、サーフエアもアプリで予約できる。カリフォルニア州内の12都市間が、1カ月1950ドルで乗り放題。月4回乗れば、1回約500ドルでプライベートジェットを利用した気分になれる計算だ。既に3000人が利用しており、間もなくヨーロッパでもサービスを開始する。

【参考記事】テック大手が軒並みスマートスピーカーに参入する理由

オーダーメイド感覚で

こうしたオンデマンド航空サービスを可能にしたのはAIだ。AIは航空機が必要な時期と場所を推測し、そのフライトを利用しそうな会員を予測できる。

ユンによれば、こうした定額制サービスは航空会社と乗客の関係を変える。航空会社はマイルごとの利益といったそろばん勘定にとらわれず、乗客の待遇向上に意欲的になれる。ルフトハンザドイツの子会社ユーロウィングスも、フライト10回分で500ユーロ前後の定額制を試験的に実施している。

いずれAIベースの定額制が主要航空会社のビジネスの一環として定着すれば、技術革新の可能性はさらに広がるはずだ。オンラインのDVDレンタル同様、AIも顧客の旅の傾向を学習するだろう。

特定の都市を頻繁に訪れ、追加料金を払ってでも足元スペースの広いフライトを選び、有料のWi-Fiを利用し、離陸後はバーボンを2、3杯......。それを航空会社のコストおよび空席状況と照合し、その人に合うフライトをはじき出す。

乗客にとってはいくらか安上がりな上に、フライト検索の時間と手間も省ける。それに乗客も航空会社も運賃の目安がつく。業務的かつ敵対的だった両者の関係は、愛着を感じる長い付き合いに変わる可能性がある。

そうなればもう引きずり降ろされる心配はない......とは言わないが、バーボンの好みくらいは覚えてもらえるはずだ。

[2017.5.30号掲載]
ケビン・メイニー(本誌テクノロジー・コラム二スト)


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