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イチロー選手はもう安打数で評価する領域を超えている - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代

ニューズウィーク日本版 / 2017年6月1日 17時0分



さらに憶測を重ねるのであれば、この両者について、本人同士はどこかで和解をしているのではないかと思います。2人の野球と人生に取り組む姿勢から見て、私は個人的にそんな感触を持っています。

そんなわけで、いくらイチロー選手を応援したいからといって、「現役最高安打数」でベルトレ選手にイチロー選手が抜かれそうなのは「残念だ」というニュアンスでイチロー選手を応援するというのには、違和感を覚えずにはいられません。

イチロー選手は長く栄光に満ちた、しかし同時に苦しみも多かった現役生活の最後の段階に来ていることは否定できません。今は、マーリンズの同僚たちも、そしてマッティングレー監督も、そして、マイアミのファンたちも、ベンチにいていつでも出場できる準備を怠らないイチロー選手の野球に取り組む姿勢と存在感に、それだけで熱い畏敬の念を抱いているのです。

それで十分であり、この期に及んで「1本でも多く打って、少しでもベルトレ選手に抜かれるのを遅らせて欲しい」などと求めることは、私にはとてもできません。試合に出場しても、出場しなくても、イチロー選手の誠実で真剣な生き方そのものを、アメリカの野球ファンは深く理解しています。すでに「誰かとの比較というのは無意味な領域」にこの不世出の天才は入っているのです。

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