国交断絶、小国カタールがここまで目の敵にされる真の理由
ニューズウィーク日本版 / 2017年6月7日 8時0分
<サウジアラビアなど6カ国が突然カタールとの国交断絶を発表。小さなカタールがここまで目の敵にされる背景にはテロ支援などの他に、父を退けて首長の座を奪ったり、女性が自由に運転できる文化など、湾岸諸国の体制を危うくしかねない要素があるからだ>
2017年のドーハは、1914年のサラエボのようになるのだろうか? セルビア人青年がオーストリア=ハンガリー帝国の皇位継承者を暗殺したサラエボ事件は、第一次大戦の引き金になった。今、万一衝突が起きるとすれば、サウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)を中心とした中東諸国対イランという構図だ。アメリカは、戦争を食い止めるために一刻も早く手を打つべきだ。
サウジアラビアとUAE、バーレーン、エジプトなどの計6カ国は、4日から5日にかけて、カタールとの国交を断絶すると相次いで発表。対イラン強硬姿勢を貫くアラブ湾岸諸国と一線を画してきたカタールが相手だ。
【参考記事】中東諸国のカタール断交のウラには何がある?
サウジアラビアはカタール行きの航空機の上空通過を停止し、カタールの唯一の陸路である国境も、海路も遮断した。どう見ても開戦事由に相当する決定だ。
ちなみに今から50年前の6月5日に始まったイスラエルと中東アラブ諸国の第3次中東戦争(6日間戦争)は、エジプトが紅海のティラン海峡を封鎖したことが引き金になった。怒ったイスラエルが先制攻撃を仕掛け、10日までに圧勝した。
一方のイランは、食料を輸入に頼るカタールに対して、自国の3つの港の利用を許可すると発表したもようだ。サウジアラビアとUAEにしてみれば、やはりカタールは裏でイランと繋がっていたという確信を強めるしかない。
外国人なら飲酒もOK
事態が急展開した背景には、少なくとも2つの説がある。まずカタール政府の言い分を信じるなら、5月24日に国営カタール通信がハッカー攻撃を受け、偽ニュースが流された。その中で、カタールの国家元首タミム首長が「アラブ諸国にはイランを敵視する根拠がない」と発言した、とするデマが流された。
また、カタール政府がイスラム組織ムスリム同胞団やパレスチナのイスラム過激派組織ハマスを支援しているとか、カタールとイスラエルがいいムードだ、とする「報道」もあった。
一方、サウジアラビアやUAEなどは、タミム首長の発言は事実だとしてやり玉に挙げた。各メディアはタミムの発言を繰り返し放送する一方、発言を否定するカタール側の主張が国内で視聴されないようカタール・メディアへの通信を遮断した。
この記事に関連するニュース
-
IMFが2025年のMENA地域の経済成長とインフレ見通しを発表(中東、アフリカ)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年5月2日 0時55分
-
ガザめぐりイスラエルとイランが戦い合う理由 イランを国際的に孤立させようとするイスラエルの思惑
東洋経済オンライン / 2024年4月24日 5時50分
-
イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイスラエル支援「中東におけるバイデン外交の転換点へ」
ニューズウィーク日本版 / 2024年4月23日 13時50分
-
ガザめぐりイスラエルとイランが戦い合う理由 イランを国際的に孤立させようとするイスラエルの思惑
東洋経済オンライン / 2024年4月23日 7時50分
-
アングル:湾岸諸国、戦争阻止へ奔走 イラン・イスラエルとの外交関係活用
ロイター / 2024年4月15日 15時1分
ランキング
-
1“中国軍戦闘機の豪軍ヘリ妨害”オーストラリア首相は強く非難 一方で中国は反論
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年5月7日 21時11分
-
2イスラエル、ラファで限定地上戦=ハマスは「休戦案受諾」表明―ガザ交渉継続
時事通信 / 2024年5月7日 23時57分
-
3米連邦裁判事13人、コロンビア大出身者の採用拒否
ロイター / 2024年5月8日 10時42分
-
4ラファ侵攻遅延が狙いか…ハマスの休戦案承諾、イスラエル「罠だ」
読売新聞 / 2024年5月8日 8時14分
-
5プーチン大統領、5期目就任式 ウクライナ侵攻の正当性強調も…政権運営の不安要素は
日テレNEWS NNN / 2024年5月7日 19時23分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください