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ISIS戦闘員を虐殺する「死の天使」

ニューズウィーク日本版 / 2017年6月15日 14時0分

【参考記事】モスル奪還作戦、死体安置所からあふれ返る死体

もっとも、歓迎されるとは限らない。国境をはさんでカタイブ・アル・イマーム・アリと目と鼻の先に陣取っているのは、米軍の空爆支援を受けるシリア民主軍(SDF)だ。クルド人を主体に、反体制派のアラブ人部隊やISISと闘う少数民族などから成るSDFは今、ISISが首都と称するシリア北部のラッカに猛攻撃を仕掛けている。その米軍とSDFが、シリアのアサド政府軍とこれを支援するイランを強く警戒している。PMFの部隊も、イランで訓練を受けているため信用されないのだ。

SDFのタラル・シロ報道官は先月、イラン政府が後ろ盾のPMFがシリア領土に入ることは許さない、と言った。「もし侵入しようとすれば、応戦する」と、クルド語放送のニュース局「クルディスタン24」に語った。

イラク奪還に中心的役割

だがここ数日、PMFがすでに国境を越えてシリア領内に入り、戦闘に備えて塹壕を掘り始めたという報道がある。PMFがシリアとの国境沿いで、ISIS掃討のためにシリア政府軍と同盟を組んだ可能性はある。だがPMFのアーメド・アル・アサディ報道官は、噂を否定した。クルディスタン24によれば、アサディは「イラク正規軍はイラク領土の外で活動しない」と言った。

PMFは過去3年間で、一時イラク国土の45%を支配したISISから領土を取り戻すのに中心的な役割を果たした。スンニ派の超保守派主体のISISは、支配下に置く住民の集団処刑や投獄を行い、残忍な圧政を敷いた。そこへ10万人以上のシーア派民兵が奮起して、重要都市でISIS一掃を掲げて戦った結果、ISISの影響力が及ぶのはモスルとわずかな地域を残すのみになった。アズラエルもそんなシーア派民兵の1人だ。5人の子を持つ父親でもあるアズラエルは、銃弾だけでなく斧や剣を使ってISIS戦闘員を惨殺し、戦いを通り越した残忍さで注目を浴びた。



謝罪を迫られたこともある。昨年ISIS戦闘員の死体を燃やす動画が拡散されたとき、ソーシャルメディアで激しい批判にさらされたのだ。しかも動画は、シーア派民兵やイラク政府軍の報復を恐れるイラクのスンニ派住民を震え上がらせた。アズラエルは自分たちの敵はISISの戦闘員だけだと説得しなければならなかった。

【参考記事】ISIS「人間の盾」より恐ろしい?イラク軍によるモスル住民への報復

「我々は平和的な存在には何ら脅威を与えない」とアズラエルは言った。「我々はカタイブ・アル・イマーン・アリとイラク政府軍の部隊で構成されており、敵はダーイシュ以外の何者でもない。ダーイシュをイラクにとどまらせたい者など誰一人いないはずだ」

何があろうと、アズラエルは使命に忠実だ。ISISを「小麦粉になるまで」粉々にする、と彼は言う。ISISの壊滅後は、スンニ派や少数派のヤジディ教徒も加わったとされるカタイブ・アル・イマーン・アリはあらゆる部族と協力して、ISISの復活を阻止すると言った。

【参考記事】民族消滅に近づくイラクの少数派

「イラクをISISから解放したら、奴らが決して戻らぬようにする」と、アズラエルは言った。「世界がISISの犯罪を目撃し、我々を支援してくれることを望む」

(翻訳:河原里香)

トム・オコナー


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