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アジアにも及んだカタール断交の圧力

ニューズウィーク日本版 / 2017年6月19日 16時0分

<カタールと断交したサウジアラビアがパキスタンに対し、どちらの味方かはっきりするよう迫った。だがパキスタンにとって、カタールの孤立は他人事ではない>

サウジアラビアなどが隣国カタールと断交した問題で、南アジアのイスラム教国パキスタンが、どちらの味方かはっきりせよとサウジアラビアに迫られている。パキスタンは今のところ巻き込まれたくないと考えているが、いつまでも中立ではいられないかもしれない。

報道によれば、先週月曜にサウジアラビアのサルマン国王とパキスタンのナワズ・シャリフ首相がサウジアラビア南西部のジッダで会談した際、サルマンはシャリフに対し、サウジアラビアかカタールのどちらか1つを選択するよう最後通告を突きつけたという。

中東アラブ諸国は今、大きな外交危機に直面している。先月ドナルド・トランプがサウジアラビアを訪問した直後、サウジアラビアはバーレーンやエジプト、アラブ首長国連邦(UAE)とともにカタールと断交した。カタールが中東でのテロを支援しているという理由からだ。サウジアラビアはそれ以降、小国カタールを孤立させるために他のイスラム諸国を仲間に引き入れ、執拗にカタール包囲網を築こうとしている。

不安になるパキスタン

湾岸諸国の間で起きた今回の危機は、当事国以外の多くの国を巻き込んできている。サウジアラビアがカタールの唯一の陸路である国境を封鎖し、食料や水の確保が難しくなると、すかさずサウジアラビアの仇敵イランが支援に乗り出した。同じ中東のトルコもカタールを支援する構えで、サウジアラビアの対応を批判し平和的な解決を求めた。その間もずっと口を閉ざしてきたのが、パキスタンだ。

カタールがアラブ諸国から突然仲間はずれにされたことで、パキスタンは不安になった。パキスタンはカタールと同様アメリカの同盟国である一方、テロ組織に資金援助しているとして国際的な批判にさらされており、今のカタールの苦しい状況が他人事とは思えないからだ。

アフガニスタンとインドは、パキスタンがイスラム教スンニ派武装組織を支援していると名指しで批判し、アフガニスタンの反政府武装勢力タリバンや南アジアのイスラム過激派ラシュカレトイバなどもパキスタンが後ろ盾だと主張している。



アメリカもかつて、タリバンの指導者だったオサマ・ビンラディンがパキスタン北部アボタバードの邸宅に潜伏していたことが明らかになると、パキスタン政府に背を向けた。両国の関係は悪化し、パキスタンの司法当局はビン・ラディンの殺害作戦でCIA(米中央情報局)に協力したパキスタン人医師のシャキル・アフリディに対し、国家への反逆を企てたとして禁錮33年の判決を言い渡した。

それでもアメリカとパキスタンは数年で軍事協力を再開した。昨年バラク・オバマ前米大統領はパキスタンに対して10億ドル超の人道・軍事支援を行うと発表した。だが後任のトランプは、オバマが決めた支援の大幅削減を検討中だ。

パキスタンは大っぴらにサウジアラビアを支持することは依然拒否しているが、トランプはパキスタンのカタールに対する影響力を行使して、湾岸諸国の危機を収拾することを求めているとも伝わる。一方、パキスタンと敵対する隣国インドは、サウジアラビアの断交に従わず、新たに直通航路を開いたと言われる。

(翻訳:河原里香)


トム・オコナー

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