シリアで米軍機を撃墜すると脅すロシアの本気度
ニューズウィーク日本版 / 2017年6月21日 21時15分
<ロシア国防省の警告は脅しに過ぎない、というもっともな見方もあるが、警告の効果は既に表れはじめている>
今週月曜に米海軍の戦闘機がシリア政府軍機を撃墜したのを受けて、ロシアは今後、シリア西部を飛行する米軍機をロシア軍の「標的」とみなすと警告した。米ロともシリア内戦に介入しているが、ロシアはシリアのバシャル・アサド政権を、アメリカは反政府勢力をそれぞれ支援している。
ロシア国防省とロシア外務省は米軍による撃墜に猛反発し、今後はシリア西部を飛行する米軍機を「追跡」し、シリア上空での衝突回避のために2015年に設置したアメリカとの通信を遮断すると発表した。ロシアによる一連の警告について、専門家は懐疑的な見方を示している。一体ロシアは本気で対抗措置を取るつもりなのか。それともあえて過激な表現を使って強いロシアを見せようとしたのか。
ロシアが一方的にアメリカとの通信を遮断すると脅したのは、今回が初めてではない。ロシア外務省は4月にも、通信の遮断を通告した。そのときは、アサド政権による化学兵器使用に怒ったアメリカが、シリアの空軍基地にミサイルを撃ち込んだことへの対抗措置だった。
【参考記事】米軍がシリアにミサイル攻撃、化学兵器「使用」への対抗措置
英シンクタンク英国王立防衛安全保障研究所(RUSI)の研究者サラ・レインは、当時ロシアが実際に米ロ間の通信を遮断したかどうかはっきりせず、恐らく今回も本当には遮断しないだろうと指摘する。
トランプが生んだ不確実性
「ロシアがアメリカとの通信を遮断するのは現実的でない。ロシア自身のためにならない」とレインは言う。「とくに今は、緊張が高まったときのアメリカの出方が以前より予測不能になっている」
レインによれば、バラク・オバマ前政権のときに途中からシリア空爆に参加したロシアがあっという間に主要プレイヤーになれたのは「米軍はロシアとの軍事衝突を避ける」という計算があったからだ。
しかしドナルド・トランプ米大統領の就任後、「米軍はシリア内戦で以前より大胆な作戦を実行する裁量を与えられた」とレインは言う。「そのことが、ロシアを躊躇させている」
【参考記事】トランプはロシア疑惑をもみ消すためにシリアを攻撃した?
ロシア国防省の警告はいかにも大げさだった。わざわざ「標的」という言葉を使い、ロシア軍はユーフラテス川から西を飛行する米軍機を撃ち落とす可能性があると発表したのだ。だが、一体どのような状況下で撃墜するのかについて、レッドライン(越えてはならない一線)を引くことは避けた。
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
中国軍の演習 国際的信用を損なう台湾威嚇
読売新聞 / 2024年5月25日 5時0分
-
ロシア・ウクライナ、一夜に大規模ドローン攻撃応酬 露石油精製工場が稼働停止
産経ニュース / 2024年5月19日 22時20分
-
「覇気のない」演説から見えるプーチンの焦り ウクライナは逆に夏の反攻作戦準備に注力へ
東洋経済オンライン / 2024年5月14日 9時30分
-
アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プーチンの危険なハルキウ攻勢
ニューズウィーク日本版 / 2024年5月13日 18時55分
-
ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行する動画公開...激しさ増すロシア国内への「越境攻撃」
ニューズウィーク日本版 / 2024年5月4日 13時9分
ランキング
-
1欧州3カ国、パレスチナを正式承認=イスラエルは反発
時事通信 / 2024年5月28日 21時25分
-
2北の「軍事偵察衛星」打ち上げ失敗、ロシア支援の新型エンジンに問題か…韓国の専門家の見方
読売新聞 / 2024年5月28日 19時18分
-
3「民間人保護」要求高まる=国際社会、一斉に批判―ラファ空爆
時事通信 / 2024年5月28日 20時40分
-
4ポーランド、ウクライナ派兵を排除すべきでない=外相
ロイター / 2024年5月28日 16時6分
-
5イスラエル軍、ラファ中心部に到達か=避難民密集地に新たに攻撃と報道
時事通信 / 2024年5月28日 23時38分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください