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ブレグジット大惨事の回避策

ニューズウィーク日本版 / 2017年6月26日 9時45分

そもそも保守党以外の議員のほとんどは、経済と雇用への打撃を最小限に抑えるソフトブレグジットを希望している。ただ、今回の選挙で議席を大きく増やした野党・労働党のジェレミー・コービン党首は強気になっており、ハードブレグジットを掲げてきたメイがさらに墓穴を掘るのを見守るつもりだ。

また、英議会がソフトブレグジットに向けて一致したとしても、それが実現する保証はない。イギリス以外の27のEU加盟国は、これまでになく強い立場にある。メイが3月に離脱通知を提出した1カ月後には、さっそくイギリス抜きの首脳会議を開き、EUとしての離脱交渉の基本方針を決めた。

それによると、EUが優先的に交渉する分野は、イギリスに住むEU市民の権利保護と、最大600億ユーロとされるイギリスの未払い分担金の請求、そして北アイルランド(イギリスの一部)とアイルランド(EU加盟国)の自由通行権の確保だ。

EUに誠意を示すために、イギリスはEU市民の権利保護を一方的に認める措置を取るべきだ。未払い金の清算については、離脱後に移行期間を設け、その間も分担金を支払うことで圧縮できるだろう。アイルランドの国境問題については、移行期間中は単一市場と関税同盟にとどまることで当面対処できる。

27加盟国は、この3つの優先交渉分野で「十分な進捗」があったとき初めて、貿易関係の交渉に着手するとしている。

【参考記事】メイ英首相が誰からも嫌われる理由

せめて関税同盟に残留を

イギリスにとっても、EUにとっても、経済的に最も望ましいのはイギリスが単一市場と関税同盟にとどまることだ。これなら貿易への影響はほとんどないし、既存のサプライチェーンも維持できる。

しかし、それには人の自由な移動の確保が欠かせない。だが、ブレグジットを支持した多くの人にとって、移民や出稼ぎ労働者の流入を制限することこそが最大の支持理由だ。それだけにこの問題は、メイにとって大きな頭痛の種になるだろう。

政治的には、ブレグジットによってイギリスが苦しい状況に置かれたほうがEUにとっては好ましい。EU離脱を考える他の加盟国への「見せしめ」になるからだ。また多くの加盟国が、ブレグジットによって世界で1、2を争うロンドンの金融センターの一部分でも誘致できるのではないかと期待している。

だが、窮地に陥った英政府から和解の申し出があった場合、それをはねのけるのはEUにとっても賢い選択ではない。ドナルド・トランプ米大統領が、貿易面でも安全保障面でもヨーロッパとの協力に懐疑的な姿勢を示すなか、経済大国で核保有国でもあるイギリスを遠ざけるのは得策ではない。

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