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ベンチャーの未来は起業しない起業へ

ニューズウィーク日本版 / 2017年6月27日 10時10分

データ分析・提供を手掛けるグッドコールの昨年の調査によれば、ユニコーンの創設者の9割は、全米の大学総数のうち3%を占めるにすぎない一握りの大学の出身。現実的には、ほとんどがスタンフォード大学かハーバード大学の卒業生だ。



資金調達に悩まないで

より多くの、より多様な人がチャンスを手にできる社会でなくてはならない。テクノロジー業界周辺では今、そうした認識が芽生えている。アメリカ・オンライン(AOL)の共同創業者スティーブ・ケースは、米国内のさまざまな都市を対象とする起業支援活動に着手した。

とはいえ、シリコンバレーではない場所にシリコンバレー的環境を創出するのは難しい。

こうした現実を受けて、リービンは考えた。問題は「企業」という考え方そのものではないか。発明家に起業しろというのは、作家に出版社を立ち上げろというようなもの。テクノロジーが進化した今の時代、もっといいやり方があるはずだ。

たどり着いた答えが、リービンが「スタジオ型」と形容するオールタートルズだ。その手本ともいえるのが、動画配信サービス大手のネットフリックス。同社は製作や配信を受け持つスタジオを運営しており、脚本家や監督はビジネス面に捉われずに創作に集中できる。

オールタートルズは、革新的なアイデアの持ち主が資金調達や法的問題に悩むことなく製品開発に専念できるよう、起業プロセス全般を代行する。発案者側は報酬として、創設された企業の株式を取得。オールタートルズが手掛けるほかのベンチャーの株式の一部も受け取る。リービンいわく「仲間同士の連帯」の象徴だ。

アイデアを製品化したメンバーが、オールタートルズの枠組みの中で新たなアイデアに取り組むことがリービンの理想だ。ある製品を開発したからといって、そのために立ち上げた企業に縛られる必要はないという。オールタートルズがあれば、自ら企業を運営せずにひたすら革新を追求できる。

【参考記事】気になるCMを連発、旅行サイト「トリバゴ」の意外な正体

究極の目標は、オールタートルズのネットワークを世界規模に拡大し、ハーバード大学やスタンフォード大学の出身でない人々のアイデアを眠ったままにしないこと。そしてアメリカの地方都市の経済改善に貢献することだ。ちなみに、同社初の案件3つのうち2つは東京とパリを起業の場としている。

「企業という概念の創造的破壊を実現できると考えている」と、リービンは意気込む。

ところで、風変りな社名の由来は? 地球は平面状であるとされた昔、世界は巨大な亀の背に支えられているとの説があった。その亀を支えるのはまた別の亀、その亀を支えるのも亀。世界を支えるのは全て亀だ、と。

同様に、新しいアイデアのためのプラットフォームであるオールタートルズは、クラウドサービスやインターネットといったプラットフォームの上に成り立っている。プラットフォームは現代の「亀」なのだ。

そんな話は嘘くさい? だがオールタートルズが、シリコンバレー中心の世界観を覆したことだけは確かだ。

[2017.6.27号掲載]
ケビン・メイニー(本誌テクノロジー・コラム二スト)


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