シリア東部はアサドとイランのものにすればいいーー米中央軍
ニューズウィーク日本版 / 2017年6月28日 21時27分
軍司令部が本能的に自らの任務を限定したがるのは理解できる。だが米中央軍の司令官たちは、2003年のイラク戦争や2011年のリビア内戦の後、復興安定化計画を欠いたために起きた混乱をあまりによく知っている。
米中央軍は、2017年のシリアは当時のイラクやリビアとは違うと考えているようだ。米軍は対ISIS掃討作戦の地上戦の「パートナー」であるクルド人主体の反政府勢力「シリア民主軍(SDF)」を支援しているだけなので、内戦後のシリアを統治する責任はSDFにあるという考え方だ。
もしイスラム教スンニ派が大半を占めるシリア東部を統治するのが、クルド人やアラブ人の外国人部隊には無理というなら、アサド政権やイランがまとめて支配すればよい、という考えなのかもしれない。
反政府勢力と協力し、シリア東部に持続可能な非アサド政権を作ってテロの再燃を防ぎ和平協議を取り持つのは、「我々の仕事ではない」と、米中央軍は言っている。
米軍も地上戦を戦うべきだった
シリアでISISに対する勝利を確実なものにすることにいたっては、誰の仕事でもなさそうだ。ドナルド・トランプ米大統領はバラク・オバマ前大統領と同じく、アサド政権の本性を知っている。テロや過激主義の温床で、地域を不安定化し、遠いヨーロッパまで毒をもたらす。
だがトランプはオバマと同様に、米中央軍の導くまま、ISISとの戦いを米軍を含むプロの地上部隊ではなく、クルド人主体のSDFに任せきりにした。SDFはよほどの幸運に恵まれない限り、ラッカ奪還に大きな苦戦を強いられ、彼らがシリア東部の真の戦利品とみなす産油地デリゾールの獲得も困難と知ることになるだろう。
どちらにしろ米中央軍はISISが消え次第、撤退する。デリゾールがアサドとイランの手に落ちようとお構いなしだ。
もし対ISIS地上作戦で有志連合が最前線に立っていれば、ISISはとうの昔にシリア東部から消え、アサドに代わる統治が始まっていただろう。アメリカがSDFに依存して内戦を長引かせた結果、ISISの寿命は2年以上延びた。その間にISISは、トルコや西ヨーロッパで大規模なテロ攻撃を計画、実行した。
そして今度は、ISIS消滅後の空隙をイランとアサドが埋めるよう手を貸している。
イランがシリアで影響力を拡大するのはアメリカの国益に反する、というトランプ政権の見方は正しい。だが米中央軍が明かしたシリア政策は、イランとアサドがシリア東部を支配しても一向に構わないと言っている。SDFを攻撃せず、対ISIS掃討作戦で「協調」するという条件を満たしてさえいれば。
この記事に関連するニュース
-
イラン、米メディアのトランプ氏暗殺計画報道を否定「悪意ある」
AFPBB News / 2024年7月17日 19時57分
-
緊迫するイスラエルとヒズボラの影で、イランが狙う「終わりなき消耗戦」と戦争拡大の危険性
ニューズウィーク日本版 / 2024年7月2日 14時21分
-
イランの核武装への兆候か? イスラエルとの初交戦と大統領墜落死が示すもの
ニューズウィーク日本版 / 2024年6月27日 12時40分
-
「トランプ陣営の世界戦略がさらに明るみに」その3 中国こそが最大の脅威
Japan In-depth / 2024年6月27日 11時0分
-
ガザ激戦「間もなく終了」 イスラエル首相が明言、部隊再編
共同通信 / 2024年6月24日 9時55分
ランキング
-
1空港や鉄道、世界で対応に奔走 豪テレビ、映像素材流せず
共同通信 / 2024年7月19日 20時23分
-
2米サイバーセキュリティー企業CEO、世界的システム障害めぐり「問題を修正、まもなく復旧する」と謝罪
日テレNEWS NNN / 2024年7月19日 22時56分
-
3世界的システム障害、復旧になお数日か 米政権も調査に
ロイター / 2024年7月20日 6時50分
-
4イスラエルの入植活動は国際法違反、ICJが勧告 イスラエル反発
ロイター / 2024年7月20日 1時26分
-
5バイデン撤退論が米民主党で急拡大、要求の議員計35人に 本人は選挙戦継続訴える
産経ニュース / 2024年7月20日 8時41分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)