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ロシア疑惑はロシア人にどう伝えられているのか

ニューズウィーク日本版 / 2017年6月30日 20時0分

番組司会のウラジーミル・ソロビエフとプシュコフが議論していたテーマは、「オバマ政権はなぜロシアにサイバー爆弾を仕掛けたのか?」だ。



これは明らかに、6月23日の米ワシントン・ポスト紙の記事に基づいたテーマだ。ロシアが米大統領選にサイバー攻撃を仕掛けたことに対する報復として、バラク・オバマ前米大統領がロシアのインフラにサイバー爆弾を仕掛けることを承認したという記事だ。ただし、記事の脈絡やロシアに対する疑惑には一切触れられない。ロシアの視聴者は、アメリカが正当な理由もなくロシアを攻撃した、という議論を見せられたわけだ。

ロシアのアメリカに関する報道の仕方は変わった。だが海外のニュース偏重で、国内問題を犠牲にする体質は変わらない。

ロシア人の大半は、国際舞台でのロシアの成功を誇りに思う。ウラジーミル・プーチン大統領が人気なのは、景気対策や格差是正が評価されたからではない。プーチンがロシアの至る所で称賛されるのは、「外交大統領」として優れているからだ。米調査機関ピュー・リサーチ・センターの調査によれば、プーチンが「世界の問題について正しい行動を取り」、ロシアは国際舞台で名声を得たかという問いに対し、そうだと答えたロシア人の割合は87%に上った。

【参考記事】プーチンをヨーロッパ人と思ったら大間違い

ロシア人は外交を他のどんな分野より重視する。ただし外交でも、具体的な政策について尋ねると、必ずしも評価は高くない。

例えばウクライナへの軍事介入については、プーチンのやり方を支持した割合は2年前の83%から現在は63%に低下している。経済政策への支持率は55%だ。

強い祖国はロシアの無形財産

圧倒的に大多数のロシア人が、物価上昇や政治家による汚職、求人の不足を重大な問題と考えている。だがプーチンが抜群の外交指導者である限り、どんな不満も全体的な支持率には影響しないのだ。

だが、ロシアがウクライナ南部のクリミア半島を併合した2014年以降、ロシアの国際的地位を押し上げる指導者としてのプーチンへの評価は高いままだが、経済をよくしてくれる指導者としての期待は下がってきている。

外交政策と国内政策の重要な相違点は、それらの政策を国民がどのように体験するかだ。物価上昇は買い物に行けば肌でわかるし、道路整備の状況も車を運転しバスに乗ればわかる。外交政策はそれが何であれ、テレビや新聞を通じて経験するしかない。それでもロシア人にとっては、外交政策が成功し、国際社会におけるロシアの地位が高まることは、目に見えない無形の財産なのだ。



だからこそ、アメリカが大国化するロシアの封じ込めに苦戦しているというロシアメディアの報道が、ロシア国内で大きな関心を集める。ロシアが目指す偉大な国の概念は、トランプの言う偉大な国の真逆だ。トランプは国内の雇用拡大に偉大さを求め、海外の問題にはほとんど関心を示さない。

プーチンとトランプが、正反対の偉大さを国民に売り込むため互いを利用しようとしたのは皮肉なことだ。

(翻訳:河原里香)

This article first appeared on the Wilson Center site.

マクシム・トルボビューボフ(米ウッドロー・ウィルソン・センター/ケナン研究所上級研究員)


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