日中戦争から一帯一路まで「パンダ外交」の呪縛
ニューズウィーク日本版 / 2017年7月4日 10時30分
だが既に豊かになっていた日本とは違い、中国では58年からの農村の人民公社化と66年からの文化大革命で人々が満足にご飯を食べられないような状況が続いた。誰もパンダが「日中友好のシンボル」とは知らなかっただろう。
世界のどの国に派遣されても、中国を代表するパンダは漢字2文字の名前で呼ばれる。特に日本では、この命名に違和感はないようだ。中国以上に中国史の年代や漢詩をたたき込まれる教育に慣れているからだろう。
「文化的植民地」日本のこうした友好の努力を当の中国は評価するどころか、「小日本」と軽蔑する。古代から中国に船をこぎ着けて漢籍を請うては持ち帰っていたのに、近代に入ってから西洋化して傲慢になり「侵略」までした、と中国は考えている。
【参考記事】香港返還20年 若者たちは中国への「愛国心」薄く
中国は日本を文化的に中国の下位国だと尊大に思っているのに、日本は構わずにパンダとその「主人」を過大評価する。漢文重視の教育を見直し、パンダ外交の呪縛を自ら解いていかないと、日本は中国の威圧的膨張にいつまでたっても対応できないだろう。
中国のパンダは忙しい。7月にドイツのハンブルクで行われるG20首脳会議に合わせて、6月にペアがベルリン動物園に送られた。2頭は15年間貸与され、毎年100万ドルが中国に支払われる。習が進める経済構想「一帯一路」は成功しているかどうか怪しいが、パンダは外交面でも経済面でも確実に中国のために働いている。
【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル! ご登録(無料)はこちらから=>>
[2017.7. 4号掲載]
楊海英(本誌コラムニスト)
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
フランス「独自外交」で中国に接近、取り込まれる懸念 ウクライナ仲介役も期待
産経ニュース / 2024年5月6日 19時56分
-
習近平国家主席がフランス到着 “関係強化し米をけん制”狙いか
日テレNEWS NNN / 2024年5月6日 12時3分
-
中国・習近平国家主席、フランス到着 5年ぶりの欧州訪問開始 欧州との関係安定とアメリカけん制狙いか
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年5月6日 5時51分
-
サンフランシスコにパンダ 中国、来年贈る計画
共同通信 / 2024年4月19日 20時32分
-
パンダ「シャンシャン」とつながるオンライン交流会が東京で開催
Record China / 2024年4月17日 16時30分
ランキング
-
1プーチン氏、戦術核演習を指示=「西側への対抗措置」
時事通信 / 2024年5月6日 19時13分
-
2バイデン政権、米国製弾薬のイスラエル輸送を停止か…ハマスとの戦闘開始後で初
読売新聞 / 2024年5月6日 17時10分
-
3ラファ東部から「10万人退避させている」 イスラエル軍
AFPBB News / 2024年5月6日 16時28分
-
4仏中首脳が会談=ウクライナ、貿易摩擦で溝
時事通信 / 2024年5月6日 23時52分
-
5中国、カナダの調査は「うそ」 総選挙に介入と報告書
共同通信 / 2024年5月6日 20時33分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください