G20で孤立したのはトランプだけでなくアメリカ全体 - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ニューズウィーク日本版 / 2017年7月11日 15時0分
ロイドの「ヨイショ記事」にしても、「ディールの勝ち負け」において、「一対一で押しまくったので良かった」という話になっていて、政策論ではありませんでした。
一方で、民主党支持者などアンチ・トランプの側は、とにかく一刻も早くトランプを大統領の座から引きずり下ろしたいわけです。リベラルなメディアの方もそうです。ですから、週明けの報道では「温暖化と自由貿易でアメリカが孤立」というニュースではなく、「トランプ長男がロシアの弁護士に接触」というスキャンダルの方をトップ扱いにして、多くの時間をあてていたのです。
このニュースですが、昨年夏にトランプが最終的に共和党の大統領候補への指名を確定させた直後に、長男のドン・ジュニアと娘婿のジャレット・クシュナー、そして後にウクライナの親ロシア派との不適切な関係で解雇される選対本部長のポール・マナフォートの3人が、ロシア人で米民主党にコネのある弁護士に接触して「ヒラリー・クリントンの弱点を教えてくれ」と頼んだというのです。
ドン・ジュニアはこの面会については否定せず、ただし「何も有効なネタはなかった」ので「問題ない」という釈明をしており、なお「大統領は関知していない」という主張をしています。
【参考記事】トランプをうならせた文在寅の話術
大したニュースではないのかもしれませんが、仮にロシアによる「ヒラリー派に対する選挙妨害疑惑」について、トランプ陣営の「関与」が証明されれば大変なことになるわけで、メディアとしてもG20よりはこちらを優先したということなのでしょう。
では、保守派のFOXニュースなどはどうかというと、こちらもG20での「成果」を強調するという話題は少なく、週明けになると「ドン・ジュニアのロシア人弁護士との接触は問題ない」として、政権周辺を擁護する論調が目立ちました。
どうやら、G20における自由貿易や温暖化問題で、孤立しているのはトランプ大統領だけでなく、世論やメディアを含めたアメリカ全体ということなのかもしれません。関心を失っているということは、要するにそういうことです。
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