ICBMはミサイル防衛システムで迎撃できない
ニューズウィーク日本版 / 2017年7月13日 21時2分
<ICBMのスペックはとにかくけた外れ。拳銃の弾を拳銃で撃ち落とすより難しい>
先週、北朝鮮が大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射したことで、ミサイル防衛(MD)システムの有効性への関心がと論争が高まり、筆者が住むオーストラリアにも配備すべきではないか、という議論が再燃している。
そもそもミサイル防衛システムとは何なのか。どのような仕組みで、防衛にどれほど有効なのか。
ミサイル防衛の仕組み
あらゆる弾道ミサイル防衛システムは、ミサイルの軌道を追跡・誘導するレーダー網と、インターセプターと呼ばれる発射体と発射台などで構成される。
弾道ミサイルの発射を探知すると、レーダーがミサイルの軌道を追い、インターセプター(迎撃ミサイル)を発射する。同時に、1発目で撃墜できなかった場合に備えて次のインターセプターを用意する。
これは「shoot-look-shoot(観測射撃)」戦略と呼ばれるもので、1つの標的を撃墜するためにできるだけ多くのインターセプターを発射する「集中射撃戦略」とは対照的だ。
最新のミサイル防衛システムでは、KKV(運動エネルギー迎撃体)を搭載した迎撃ミサイルが採用されている。非爆発性の弾頭を弾道ミサイルに衝突させることで撃ち落とす。核爆発を起こさないためだ。
以下に挙げるミサイル防衛システムは、すべて相互の特長を生かした重層的に防衛することを目指したものだ。各システムがそれぞれの迎撃範囲で弾道ミサイルを撃ち落とすという前提で、総合的に運用されている。各システムを単独で運用することも可能だが、他のシステムと並行して運用したほうが防衛能力が高まる。
北朝鮮周辺におけるミサイル防衛システム
現在アメリカとアジア太平洋地域の同盟国は、いくつかのミサイル防衛システムを整備している。万一北朝鮮が弾道ミサイル攻撃に踏み切れば、これらが運用されることになる。
まず最も顕著なのが、米軍が韓国に配備する最新鋭迎撃ミサイル「THAAD(終末高高度防衛ミサイル)」だ。THAADは、弾道ミサイルが大気圏に再突入し標的に落下する最終段階(ターミナル・フェイズ)で迎撃する仕組みだ。
2つ目は地上配備型迎撃ミサイル「パトリオット3」(PAC3)。これは相手の弾道ミサイルがターミナル・フェイズの後半に入った段階で迎撃する仕組みだ。アジア太平洋地域に駐留する米軍や日本の自衛隊が配備する。
今のところ同地域で最も有能なミサイル防衛システムは、米軍や日本の自衛隊が配備するイージス艦に搭載する海上配備型迎撃ミサイルだろう。相手の弾道ミサイルが大気圏外に出て軌道を整える段階(ミッドコース・フェイズ)で迎撃する仕組みだ。
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