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くまのプーさんと習近平----中国当局が削除する理由と背景

ニューズウィーク日本版 / 2017年7月20日 16時0分



それでも若者が観ないものだから、もっと若者を惹きつけようと、「ラップ・ミュージック」を使ったプロパガンダを強制した。同じ画面が「他のページ」にも転載されている(いずれも左下コーナーにある▲をクリックし、15秒間ほど広告を我慢すると、ラップが始まる)。

ネットユーザーの力が勝つ日は必ず来る

こんな状況にあったので、当局が押し付ける、誰も見ないイラストより、自分たちが創ったものの方がよほど面白いと考えたネットユーザーがくまのプーさんを使い始めたのだろう。このアクセス数は凄まじく、筆者も何度も「うまい!」と思いながらクリックしたものだ。それはやがてクリックしても「法規により閲覧できません」という削除対象となり、今日まで至っているというのが現状だ。

たしかに「まぬけなプーさん」と習近平を対比させたのは、「習近平を小バカにしている」というニュアンスはあるだろう。事実、ネットユーザーの方も共産党など好きではないから、そのニュアンスを込めたにちがいない。まともな政治批判などをしたら逮捕されるのを知っているので、くまのプーさんに「思い」を込めたのかもしれない。

しかし当局側が「人のいいプーさん」と解釈すれば許容範囲内だと思うが、そんな度量はない。これがやがて「政府転覆罪」につながる運動に発展していくのが習近平は怖いのだ。
悪いことをしていなければ、こんなことを怖がる必要はないと思うが、「悪いことをしている」から、そんな度量は持てないのである。

ネット情報がもっと広がれば、削除と「新しいプーさん」の創出のイタチゴッコとなり、逆にネットユーザーの疑心を招いて「人民が真実を知る日」がやがて来るだろうことは明らかだ。その意味で、戦略的なはずの中国政府にも限界があることを、習近平は覚悟すべきだろうと思う。


[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』(飛鳥新社、7月20発売予定)『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。


※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。

≪この筆者の記事一覧はこちら≫


遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)


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