南シナ海の一部海域に独自の新名称 インドネシアが中国に対抗
ニューズウィーク日本版 / 2017年7月25日 18時50分
インドネシア政府による「北ナトゥナ海」命名の発表に対しても7月14日に記者会見した中国外交部報道官は「インドネシアの主張の詳細は知らない」としながらも「南シナ海は国際的に認知された名称である。一部の国による名称の変更の試みは意味がなく、国際的な地名標準化の取り組みに反する」と批判した。
国際司法の裁定も無視する中国
南シナ海を巡ってはフィリピンが2014年にオランダ・ハーグに常設の国際仲裁裁判所に「中国の主張には法的根拠がない」として仲裁を求めた。その結果2016年7月12日に「中国の主張には法的根拠がなく、国際法に違反している」という判断が下され、国際海洋法的には中国は全面的に敗北した。
この判断を中国は「単なる紙屑に過ぎない」と無視を決め込んでおり、自国に都合の悪いことは一切認めないという中国流の対応に国際社会は強く反発している。
さらに中国が人工島建設や軍事施設構築などを同海域で進めていることに安全保障上問題があるとして米政府などは再三警告しているがこれも無視し続けている。7月22日には、西沙諸島のウッディー島に映画館もオープンした。
このため米海軍艦艇や空軍機が南シナ海で中国が領有権を一方的に宣言している島から12カイリ(通常は領海とみなされる)を航行する「航行の自由作戦」をオバマ政権に続いてトランプ政権でも継続している。
今回のインドネシアの「北ナトゥナ海」の命名は、実質的な独自の名称提起というよりはこうした国際社会や東南アジアの他国による中国に対する対抗策の一環の意味合いが色濃い。インドネシアは南シナ海では中国との領有権争いはないが、「EEZに関しては国際的な取り決めはちゃんと守るべきだ」という強いメッセージが込められている、といえる。
[執筆者]
大塚智彦(ジャーナリスト)
PanAsiaNews所属 1957年東京生まれ。国学院大学文学部史学科卒、米ジョージワシントン大学大学院宗教学科中退。1984年毎日新聞社入社、長野支局、東京外信部防衛庁担当などを経てジャカルタ支局長。2000年産経新聞社入社、シンガポール支局長、社会部防衛省担当などを歴任。2014年からPan Asia News所属のフリーランス記者として東南アジアをフィールドに取材活動を続ける。著書に「アジアの中の自衛隊」(東洋経済新報社)、「民主国家への道、ジャカルタ報道2000日」(小学館)など
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