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子どもの貧困と格差の連鎖を止めるには「教育以外の環境」へのアプローチも不可欠

ニューズウィーク日本版 / 2017年7月31日 17時49分

【参考記事】「学費無料なんか不可能」と若者に説教するイギリスの老害

そうしたなかで、育った家庭の経済状況が厳しい場合、子どもに十分な教育環境を整えることは、とても簡単とは言えない。その結果「標準」学歴の獲得は難しくなっていく。そしてこの難しすぎる「標準」こそ、日本社会において、いまだに大手や有名企業への入社パスのような意味合いを持っている。

さらに、優良なパスとなる高偏差値大学の卒業資格を獲得しようとするなら、費用は嵩む。2011年に東京大学が行った「2010年学生生活実態調査の結果」からは、在学生の過半数の世帯年収が 950万円以上という結果が出ている(51.8%)。

活発化するNPOとその限界

「子どもの貧困」という問題が注目されて以来、貧困家庭の学習環境を整えようとする動きは非常に活発になった。例えばNPO法人「3keys(スリー・キ―ズ)」や「Learning For All(ラーニング・フォー・オ―ル)」は、学校でも家庭でもない学習支援の場を作り、多くの貧困に苦しむ子どもに学ぶ機会や居場所を提供している。

さらに昨年、日本財団が50億円を拠出して「子どもの貧困対策」に乗り出した。ベネッセと協同で、全国に100拠点、まずは居場所をつくること、そして学べる環境を整備していこうとしている。リクルートマーケティングパートナーズは、オンライン学習サービス「スタディサプリ」の開発・提供を通して、都心と地方の教育格差の是正を掲げていた。また給付型奨学金の議論も進んでいる。こうした社会の動きは、子どもの教育格差の問題に取り組む上で非常に重要な解決への糸口となっていくだろう。

それでも、なかなかこの問題が改善しない理由の1つに「学習以外の環境の未整備」という問題がある。

【参考記事】日本の若者の貧困化が「パラサイト・シングル」を増加させる




フランスの社会学者であるピエール・ブルデューは、「文化資本」という概念を提唱し、階層の再生産の原因が経済的な要因以外の、言葉づかいや行動様式、家にある絵画や書物、あるいは美術館や博物館に行く機会などからも大きく影響を受けていることを1973年に明らかにしている。

イギリスの社会学者であるバジル・バーンスタインは、中流階級と労働者階級それぞれの子どもの発話を調べ、それぞれが用いる「言語」自体が大きく異なることを1960年代に明らかにした。中流階級の発話には抽象的で一般化された表現が用いられる(精密コード)のに対し、労働者階級の子どもの発話には具体的でその場に居合わせなければわかりにくい簡潔な表現(制限コード)が用いられていたのである。

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