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「共産党の闘争は文革の再演」

ニューズウィーク日本版 / 2017年8月4日 15時30分

習に恨みを抱くようになった孫の下に、習に反感を持つ政治家が集まるようになり、習がそれを疑った可能性もある。

こういった動きは文革を彷彿させる。毛沢東(マオ・ツォートン)にとって後継者は大問題だったが、最初に選んだ劉少奇(リウ・シャオチー)(国家主席)、林彪(リン・ピアオ)(国防相)をいずれも死に追いやった。習は最初の任期が終わらないうちに後継者問題を起こしている。それだけ権力闘争が激しくなっている。



――孫に代わって重慶市トップの座に就いた陳敏爾(チェン・ミンアル)は新たな後継者候補なのか。
習にはまだ後継者がいない。陳は4人いる腹心の1人にすぎない。

――今回、郭はアメリカで腐敗を告発している。5年前に中国国内で起きた薄煕来(ボー・シーライ)事件より影響力は限定的ではないか。ネット規制で簡単には国外の情報が国内に伝わらない。
いかに規制しようと、情報は中国国内に伝わる。実際、知識人はこの郭文貴事件に強い関心を寄せている。

最近、アリババのジャック・マー(馬雲)が所有する香港のサウスチャイナ・モーニングポスト紙が、習の腹心である栗戦書(リー・チャンシュー)(党中央弁公庁主任)の娘と娘婿の金銭スキャンダルを報じ、すぐに記事を削除した。これは、マーが習に対して「私を攻撃するな、すれば郭のように暴露情報を公開する」と警告した、とも読める。

【参考記事】焼身しか策がないチベット人の悲劇

――中国外交からも目が離せない。ドナルド・トランプの米大統領選勝利を予測できず、翻弄される習は「愚か」なのか。
習は愚かではない。彼はトランプを恐れつつも、リスクを冒してでも取引をしようとしている。彼が本当に恐れているのは、アメリカとロシアが連携すること、そしてアメリカと台湾が手を結ぶことだ。

72年、リチャード・ニクソン大統領訪中でアメリカは「聯中抗蘇(中国と連携してソ連に対抗する)」政策に舵を切り、そこでアメリカと台湾との外交関係はなくなった。しかし、トランプは政権をスタートしてから、ロシアとの連携、そして台湾との関係見直しという歴史をひっくり返す政策を打ち出した。

この2つの外交政策は習を驚かせた。ところが、トランプはロシアによる米大統領選介入疑惑で国内政治の身動きが取れず、対ロ関係を改善したくてもできない。そこで習はアメリカを訪問してトランプに近づき、極力譲歩・妥協した。

ただ、北朝鮮問題で中国は石炭以外の貿易制限に応じず、かえって貿易量は増えた。怒ったトランプは南シナ海で「航行の自由」作戦を実施し、中国国内で北朝鮮と取引のある銀行を対象にした経済制裁に踏み切った。習もまた、報復しようとしているのだ。

米中ロ3国の関係は非常に興味深い。まさに「三国志」と言っていい。

――近著『米中激突 戦争か取引か 』(邦訳・文春新書)で「習近平は北朝鮮を恐れている」とも主張している。
かつて漢は大国だったが北方の小国である匈奴を、また唐は西方の小国である吐蕃をそれぞれ恐れていた。宋はモンゴル民族に、明は満州族に滅ぼされた。現在の中国も北朝鮮に滅ぼされる可能性がある。核戦争は「先んずれば制す」。先に攻撃を仕掛ければ勝つことができる。

中国は大国であり、アメリカやロシアの目もあるから簡単には動けない。一方、北朝鮮国営の朝鮮中央通信は暗に中国を指して「破局的結果を覚悟せよ」と警告した。つまり北朝鮮が中国に核の先制攻撃を行う可能性がある、ということだ。

☆本誌2017年8月1日発売最新号掲載☆


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長岡義博(本誌編集長)


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