核兵器廃絶のために、日本は理想と現実の両方を主張すればいい - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ニューズウィーク日本版 / 2017年8月8日 16時30分
3点目としては、北朝鮮危機のように現在進行形である核拡散問題については、日本は、理念だけでなく実際に経済制裁や関係諸国の協議を通じて問題の解決に取り組んでいるのに対して、核禁止条約はこうした具体的な拡散防止策には役に立たないという理由です。
以上の3つがいわば外交のタテマエであるならば、その奥のホンネの部分には、現在の日本は、核の傘に入っているのだから、報復核攻撃を合法化しておかないと、核の傘は有効にならないという考え方があると考えられます。
そんなわけで、核禁止条約には入らないというのですが、どうも、この姿勢はバカ正直というもので、そんな論理的整合性に意味があるのかどうか疑わしいように思われます。核の潜在的攻撃目標にされているのは残念ながら事実なのですから、それに対して物理的には傘で備え、法律的には核禁止条約で反対しということを通じて、二重の備えをするという発想法は取れないものでしょうか?
つまり、理想論と現実論の両方が入っている条約しか入らないというのではなく、日本が理想論の条約と現実論の条約や措置などに二重に参加してしまえば、同じように「ダブルの備え」になるのではないかということです。
【参考記事】北の最高指導者が暗殺されない理由
また、核不拡散への取り組みについて、確かに日本は大国つまり核保有国主導の北朝鮮対策などに参加してきています。ですが、この際ですから、これに加えて、同時に「非保有国としての核不拡散の取り組み」のリーダーシップを取ってみてはどうでしょう?
「核保有国と非保有国が一緒に参加できる枠組み」でないと参加しないなどという「潔癖な」考え方ではなく、発想を少し変えて、保有国主導の不拡散の行動にも参加するが、非保有国主導の不拡散の行動もリードするという動きを日本がやってしまうというのは、できないものでしょうか?
これまで日本国内では、政府が核禁止条約に反対し、被爆者をはじめとする被爆地の人々がそれに対して怒るという対立をずっと続けてきたわけですが、このような対立は不毛でしかありません。
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