海外旅行格差から見える日本社会の深い分断
ニューズウィーク日本版 / 2017年8月9日 16時10分
家庭環境による差も大きい。とりわけ、生活の全面を家庭に依存する子ども世代の格差が拡大している。小学生の海外観光旅行経験率を家庭の年収別に出した統計があるので、それをグラフ<図2>にしてみる。
年収が高い家庭の子どもほど経験率が高いが、注目されるのはこの10年間の変化だ。年収1500万円超の富裕層だけがグンと伸びている(12.0%→22.0%)。その一方で、年収300万円未満の貧困層では減少している。子どもの海外旅行経験の格差が拡大していることがわかる。
近年の学校現場では、グローバルな世界で通用する「生きる力」の育成が重視されているが、富裕層は同様の目的で国際体験を子どもに積ませようという意識が高いのだろうか。
【参考記事】シングルペアレント世帯の貧困率が世界一高い日本
こうした体験格差が、学校でのアチーブメントの違いに転化するであろうことは想像に難くない。大学入試も人物重視の方向に転換されるが、そうなった時、幼少期からの体験の違いがモノを言うようになる。
面接での仕草、立ち居振る舞い、話題の豊富さ......。ペーパーテストにも増して、育った家庭環境の影響を受ける要素だ。学校の特別活動は、こうした体験格差を是正することを目指さなければならない。
海外旅行の経験率という指標から、地域格差や階層格差によって深く分断された日本社会を見ることができる。
<資料:総務省『社会生活基本調査』(2016年)>
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舞田敏彦(教育社会学者)
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