核攻撃を生き残る方法(実際にはほとんど不可能)
ニューズウィーク日本版 / 2017年8月10日 17時45分
<自分の生活圏が核攻撃を受けた場合、爆発で生き残ったとしても、その後に放射性物質などを回避して生き残れる確率は極めて低い>
穏やかに晴れた日、カリフォルニアやグアムを散歩しているとしよう。ドナルド・トランプ米大統領と北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が核戦争を示唆させる危険な言葉のやりとりを繰り広げていたとしても......それが現実になるとは夢にも思わないはずだ。
晴れやかな気持ちで空を見上げた瞬間、あなたは大陸間弾道ミサイル(ICBM)に搭載された1100キロ相当の核爆弾が猛スピードで上空を通過する様子を目撃する。突如として迫りくる死を実感して、あなたの一日はめちゃくちゃになる。アパートの地下に核シェルターを建設しておかなかったことを後悔するに違いない。
しかしパニックに陥ることはない。核攻撃による死は、いつ訪れても不思議でない。
8月8日にトランプ大統領が、北朝鮮がアメリカを脅し続ければ「世界が目にしたことのないような炎と怒り」に直面すると発言すると、グーグルで「核攻撃で生き残る方法」の検索件数が急上昇した。
だが放射性降下物やICBMに詳しい軍事専門家のほとんどは、世界のどの地域にいようと、核攻撃を受けて生き残る確率は非常に低いという見方で一致する。
自分の住む街が核攻撃を受けても生き残り、空気中に漂う放射性物質などが地上に飛散する数カ月間を生き延びる確率を最も高める方法は、地中深くに避難して待機することだろう。
【参考記事】トランプ「炎と怒り」はトルーマンの原爆投下演説に似ている
米連邦緊急事態管理庁(FEMA)が公表した核攻撃対策用の計画指針によれば、放射性降下物の飛散時に最も安全な地下空間は、地上5階建てのアパートの地下1階と2階部分、または大規模なオフィスやアパートの地下だ。
FEMAが公表した建物別の放射性降下物に対する安全度のチャート FEMA
自力で生存するには
レンガやコンクリートではなく軽量な材料を使用して建設された家やアパートのほとんどは、避難場所として「劣る」もしくは「不適切」だと、2014年に英国王立協会の学術専門誌に掲載された研究リポートは指摘している。
2011年に米サンディア国立研究所に実施した研究では、「シカゴで核爆発が起きるシナリオ」で生存確率を分析したところ、シカゴ市民がゾッとする結果が出た。
研究者のラリー・ブラントとアン・ヨシムラの分析によれば、シカゴで核爆発が起きた場合、救出される可能性があるのは10万人だけで、残る260万人の市民は自力で何とか生き延びなければならない。
【参考記事】北朝鮮、グアム攻撃計画8月中旬までに策定 島根・広島・高知通過を予告
どうにか生き延びた場合、窓やドアから離れた屋内に避難し、被曝を避けるために同じ場所で待機することを米政府は推奨している。
「一般市民が、大量の放射線を浴びる事態になることはまず考えられない」と、米環境保護局(EPA)公式ホームページの放射線防護に関するページには記載されている。
しかしEPAの見解は、今のアメリカではあまりにも能天気に感じられる。多くのアメリカ国民が、あと数本のトランプの短いツイートの後に、本当に核戦争が起きるかもしれないと感じているのだから。
(翻訳:河原里香)
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クリス・リオッタ
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