北の譲歩は中国の中朝軍事同盟に関する威嚇が原因
ニューズウィーク日本版 / 2017年8月16日 8時0分
だから、中国の中朝軍事同盟に関する威嚇だけでなく、もちろん米朝の努力も功を奏していただろう。
日本は?
日本の岸田元外相は、某日、某テレビ番組で「今は圧力を強化していくべきで、こんなときに対話など、とんでもない話だ」といった趣旨の言葉(正確には記憶していないが、こういう趣旨のこと)を言っていた。
しかし14日、アメリカのティラーソン国務長官とマティス国防長官は、「核ミサイル問題を解決するため、北朝鮮と交渉する用意がある」とウォール・ストリート・ジャーナル紙に連名で寄稿したとのこと。これもCCTVでは速報扱いのニュースとして報道された。もちろん、米国民が危険にさらされた場合は軍事力行使も辞さないという条件も忘れてはいない。
これは中国が言うところの「双暫停」(米朝双方が暫定的に軍事的行動を停止する)を裏側から見た場合に相当しており、北朝鮮は米韓軍事演習におけるアメリカの出方を見、アメリカは北朝鮮の次のミサイル発射の出方を見る。互いに抑制があれば、対話に入るということになろう。結局、北朝鮮の唯一の軍事同盟国である中国がカードを握ったことになる。 コラム「米朝舌戦の結末に対して、中国がカードを握ってしまった」で述べたように、中国が「中朝軍事同盟」というカードを使って、米朝双方に警告した結果、双方が歩み寄った形だ。
日本は又しても、米中の真の流れからは、離れたところで動いているのではないだろうか。また置き去りにされはしないか。
もちろん圧力は強めなければならない。北朝鮮の暴走を何としてもとめなければならない。しかし戦争に突き進むことだけは何としても避けるべきで、朝鮮戦争の休戦協定を破ってきたのはアメリカであり韓国だという事実を考えれば、アメリカには対話に応じる義務がある。休戦協定を、アメリカならば破ってもいいという超法規的な国際ルールはあってはならないだろう。
韓国にしてもそうだ。本日8月15日の光復節で「日本は歴史を正視して深い反省を」といった趣旨のことを言っているようだが、(日本は二度とあのような戦争を繰り返してならないのは大前提として)、こんにちの朝鮮半島を中心とした差し迫った危機をもたらしたのは、韓国の初代大統領、李承晩であった事実を正視すべきではないのか。そこをスルーして、慰安婦像をバスの座席にまで座らせる方が優先されるのだろうか?
北朝鮮問題の根源を見ない限り、着地点は絶対に見えてこない。それに関しては『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』で詳述した。
[執筆者]遠藤 誉
1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会科学研究所客員研究員・教授などを歴任。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)『チャイナ・セブン <紅い皇帝>習近平』『チャイナ・ナイン 中国を動かす9人の男たち』『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。
※当記事はYahoo!ニュース 個人からの転載です。
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遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)
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