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シリアで「国家内国家」の樹立を目指すクルド、見捨てようとするアメリカ

ニューズウィーク日本版 / 2017年8月19日 12時0分

米国などが拠点として占領しているヒムス県南東部タンフ国境通行所一帯で活動してきた「ハマード浄化のために我らは馬具を備えし」作戦司令室(別称自由シリア軍砂漠諸派、ないしは「土地は我らのものだ」作戦司令室)所属組織は、シリア軍やイラン・イスラーム革命防衛隊の支援を受ける外国人民兵の攻勢に直面し、勢力を縮小させていった。

一方、シリア民主軍は、シリア軍と衝突することはなかったが、トルコの圧力に曝された。トルコは、アレッポ県北部のアフリーン市一帯に地上部隊を増派し、ロジャヴァ支配地域を断続的に砲撃する一方、「穏健な反体制派」と呼ばれてきた武装集団(ハワール・キッリス作戦司令室、ないしは「ユーフラテスの盾」作戦司令室)とシャーム自由人イスラーム運動を「家を守る者たち」作戦司令室として糾合し、シリア民主軍との戦闘に動員した。



自治体制を確立したことを誇示

こうした情勢のもとで発表されたのが行政区画法と議会選挙実施決定だった。行政区画法は、図で示した通り、四つの地区から構成されていたロジャヴァ支配地域を、「地域」>「地区」>「郡」>「市」>「区」>「町」>「村」>「農場」>「コミューン」という上意下達の行政単位に再編することで、北シリア民主連邦の領土を明示した。

一方、議会選挙実施決定は、9月22日にコミューン議会、11月3日に村、町、区、市、郡、地区の議会、そして2018年1月19日に地域の議会、および連邦全体の議会に相当する「北シリア民主人民大会」の議員を行政区画法に基づいて下意上達的に選出していくという内容だった。

図 ロジャヴァおよびシリア民主連合の行政区画
(注)行政区画法によると、各行政単位は人口規模によって区別され、農場は人口100人以下、村は101〜5,000人、町は5,001〜25万人、市は25万人以上の居住地とされた。また区は人口15万以下の町・村・農場群(および区議会所在地)、郡は50万以下の市・町・村・農場群とされた。(出所)筆者作成

地図2 北シリア民主連邦の行政区画(ジャズィーラ地域、ユーフラテス地域)
(出所)筆者作成

地図3 北シリア民主連邦の行政区画(アフリーン地域)
(出所)筆者作成

PKKがトルコからの分離独立をめざしてきたこと、イラク・クルディスタン地域で独立の是非を問う住民投票の実施が決定されたこと、そして「北シリア民主連邦」という国家を思わせる呼称...。これらからの類推で、行政区画法と議会選挙実施決定を、シリアからのクルド人の独立に向けた布石と解釈することも不可能ではない。

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