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トランプ ─ 北朝鮮時代に必読、5分でわかる国際関係論

ニューズウィーク日本版 / 2017年8月21日 19時30分

国際関係論を収めた学生なら、国家の指導者はしばしば愚行に走ることを知らなければならない。経験豊かな政策顧問に囲まれていようと、巨大な政府機関や情報機関の後ろ盾があろうと変わりはない。なぜなら情報は不完全で、外交ははったりと嘘の世界だからだ。

しかも官僚や政策顧問も普通の人間で、欠点がある(卑怯、出世主義、「限定合理性」などが代表的だ)。今から5年後、詳細は覚えていなくても、次の教訓をしっかりと胸に刻んでほしい。「責任のある立場にある人間は、たいてい自分が何をしているか分かっていない」



5) 社会構成主義

私は構成主義者ではないが、国家と人間社会の関係が、絶えず変化する規範やアイデンティティーによって形作られていることは認めざるを得ない。

そして規範もアイデンティティーも所与のものではなく、人間同士の営みの産物だ。話し方や書き方、変遷する我々の考えや信念も、規範とアイデンティティーの形成に関わっている。

愛国主義や、奴隷制度の廃止、戦時国際法の発達、マルクス・レーニン主義の台頭と崩壊、同性婚の受容他、世界の重要な事象を理解するには、社会的現実を物理の法則と区別することが不可欠だ。

社会的現実は、人間がやること、言うこと、考えることによってどんどん作り変えられていく。人間の態度や規範、アイデンティティー、信念がどう進化するかを予測することはできない。

国際関係にはこうした側面もあることを意識していれば、盤石と思われた国際政治の正統な理論が突然吹き飛んでしまった時も、完全に不意を突かれずにすむはずだ。

* * *

これで国際関係論の5分間大学は完結だ。国際関係論を学んだ学生が卒業から5年後まで覚えているのはこの程度だ。

もちろん、専門家レベルの知識を身に着けたいなら、大学院に行くことを検討しなければならない。それを決断するには、少なくともあと5分はかかるだろう。

いずれにせよ、国際関係論に興味をもつ読者には心からお祝いを言おう。あなた方に引き継ぐべき複雑な問題は山ほど残っている。知れば知るほど刺激的になることは請け合える。

(翻訳:河原里香)

From Foreign Policy Magazine



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スティーブン・ウォルト(ハーバード大学ケネディ行政大学院教授=国際関係論)


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